研究課題/領域番号 |
25461937
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター(研究所) |
研究代表者 |
遠藤 洋子 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター(研究所), その他部局等, その他 (20359300)
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研究分担者 |
井上 正宏 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター(研究所), その他部局等, その他 (10342990)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 癌細胞初代培養 / 放射線感受性 / 休眠状態 |
研究実績の概要 |
本研究は、新しい癌細胞初代培養系(CTOS法)を用いて、癌細胞の休眠状態と放射線感受性を検討することを目的としている。 我々はこれまでに、大腸癌患者由来の癌細胞塊(CTOS)が低酸素(1%O2)、増殖因子非存在下で休眠状態に陥ることを報告した(Endo 2014 PLoS ONE)。この休眠状態の癌細胞は、細胞増殖や代謝が非常に低下した状態にあるが、再酸素化することで再び活発に増殖する。また、この休眠状態の癌細胞は抗がん剤に対し抵抗性を示し、再発の温床となることが示唆された。 本研究では、この休眠状態のCTOSの放射線感受性について検討している。大腸癌CTOSを1つずつ96ウエルプレートにまき、高用量の放射線を照射すると、多くのCTOSは増殖することができないが、ある一定の確率(例: 15 CTOS / 96ウエル)で再増殖するCTOSが存在することを見出した。この再増殖CTOSの確率は、放射線照射時のCTOSの状態に大きく依存した。このことから、放射線照射後のCTOSの再増殖は、単なる確率論ではなく、細胞内の状態に応じた生物学的反応であることが示唆された。休眠状態のCTOSに放射線を照射したところ、再増殖するCTOSの割合が上昇した。つまり、休眠状態の癌細胞には放射線耐性クローンが多く存在すると考えられた。 今後は、休眠状態のCTOSと活発に増殖しているCTOSの遺伝子発現の差をマイクロアレイで検討し、休眠状態で発現の上昇している遺伝子を用いてマーキングを行い、休眠状態の癌細胞が放射線照射後の再増殖の起源となっていることを示す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
休眠状態マーカーとなりうる遺伝子が見いだせていないため、gene-taggingの実験が遅れている。その代替法として、4色の蛍光色素を導入した大腸癌CTOSを作成し、clonalityの検討を開始した。今後、マイクロアレイによって発現遺伝子を比較し、gene-taggingの候補となる遺伝子を絞り込む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
マイクロアレイを行い、休眠状態特異的マーカーを探索する。その休眠状態マーカーの発現を、臨床腫瘍組織の病理検体や、in vivoの移植腫瘍で確認する。また、その休眠状態マーカーの遺伝子を用いて、gene-taggingを行う。tagをつけられた細胞が、放射線照射後どのような挙動を示すかを観察する。 そのほか、放射線照射後の再増殖に影響を与える薬剤をスクリーニングし、放射線耐性に寄与するシグナル経路を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
共通の試薬や培地代を他の研究費より支出してもらったため。今年度は当研究費より支出する。
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次年度使用額の使用計画 |
StemPro hESC培地(1セット5万円)を購入する。 また、マイクロアレイ(1検体9万円×8)を発注する。
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