研究課題
本研究は、新しい癌細胞初代培養系(CTOS法)を用いて癌細胞の休眠状態と放射線感受性を検討することを目的としている。大腸癌患者由来のCTOSは、1%O2かつ増殖因子非存在下で細胞増殖を停止し、休眠状態に陥る。この休眠状態は可逆的であり、再酸素化後速やかに細胞増殖を再開する。休眠状態の癌細胞は、化学療法および放射線治療に対して抵抗性であることから、癌の治療抵抗性および再発の起源となり得る。本研究では、まずCTOSの放射線感受性を評価する実験系を樹立した。一般的な癌細胞株を用いた放射線感受性試験は、放射線照射後の分裂死を評価するコロニー形成試験で行われる。これに近い評価系として、我々はCTOSを一つずつ96ウエルプレートに撒き、9Gyを照射する実験系を樹立した。通常の培養条件の場合、9Gy照射後にはCTOSは低い確率(10%以下)で再増殖する。興味深いことに、CTOSのWnt活性を高めるとCTOSの再増殖率が上昇し、Wnt阻害剤の添加でこの反応が抑制されることを見出した(Josep et al. in preparation)。つまり、CTOSの再増殖は単純な放射線照射の確率論に加えて、癌細胞自身の感受性のheterogeneityによるところが大きいと考えられた。休眠状態のCTOSで同様の実験を行ったところ、増殖期のCTOSに比べて放射線感受性が低下した。癌細胞のheterogeneityをもたらす要因として、我々は大腸癌由来のCTOSが分化する性質に着目した。休眠状態のCTOSでは、幹細胞性マーカーであるLGR5およびEpHB3の遺伝子発現が高く保たれていた。腸管上皮細胞の幹細胞はWnt活性が高いことから、休眠状態のCTOSは高いWnt活性の保持によって放射線抵抗性となっている可能性が示唆された。
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