研究課題/領域番号 |
25461939
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
谷口 雅彦 旭川医科大学, 医学部, その他 (30374333)
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研究分担者 |
古川 博之 旭川医科大学, 医学部, 教授 (70292026)
深井 原 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (60374344)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 心停止下ドナー / 肝移植 / 虚血再灌流障害 |
研究実績の概要 |
本研究では,心停止ドナーからの臓器有効利用の観点から肝臓について下記の研究を行った。 1) 肝完全血行遮断モデルでの検討:遮断時間(温阻血時間)120分、150分、180分とモデル作りを行ったが、生存率についてはばらつきが生じ、組織像からみても、肝壊死おちうよりは循環不全によるものであった。さらにトロンボモジュリンの提供を受け投与したが出血傾向が強くなり、有効性を示すまでにはいかなかった。2)保存方法として持続灌流保存を用いた臓器灌流、機能回復の研究を開始した。60分心停止ドナーからの肝臓の単純冷却保存から22度Cへの復温灌流保存(Rewarming and subnormothermic preservation)の有効性について報告した。特に、門脈圧の低下、酸素消費量の増加、酵素マーカーの低下を求めた。3)肝臓摘出前の膜型人工肺と血液透析を組み合わせた死体内灌流の導入およびSubnormothermic条件における灌流型臓器保存併用の有用性について報告した。4)ヒトヘモグロビンを2重膜リポソーム化した人工赤血球運搬体を用いて、灌流液として研究を開始した。 臓器灌流装置に関しては、実用化について北海道庁産業振興課の協力を得て企業との交渉を開始している。すなわち、昨年10月にBioJapan2016のAMEDのシーズとして申請し、複数企業と面談を済ませた。さらに、北海道庁、産業振興課による本学への訪問見学、同課よりの企業への呼びかけもあり、北海道庁での説明会を開いた(2016年1月)。その結果興味を示した6社の中から、道庁と相談を重ね2社に絞り込み、資金を調達する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究経過の中で心停止ドナーにおける阻血障害障害肝は、単に温阻血障害のみではなく、完全阻血しかも冷保存にあるということが判明した。すなわち温阻血のみ150分完全阻血状態の肝臓でも、虚血再灌流後、循環不全は発症するものの生存においては120分とも有意差なく、その原因も明らかとはならなかった。従って、心停止ドナーの肝臓を有効利用するためには温阻血のみならず、その後の冷阻血障害を克服しなければならないと考えるに至った。一方、我々は肝臓体外灌流保存装置を研究用試作機として完成させ、温度条件、酸素供給条件を検討していた。その中で冷温から22℃までのsubnormothermiaが代謝の面から良好であり、かつ酸素消費も増加する事実を見出しており。新規灌流液のためには、酸素運搬体などを含んだ灌流液、さらに22℃程度で薬物代謝をおこなえる薬剤を応用すること、老廃物の除去なで心停止ドナーからの阻血障害(温阻血+冷阻血障害)を克服することができると考えている。現在、共同研究として人工赤血球を用いた研究、人工肺を用いた研究、除去フィルターを用いることを念頭にした研究を推し進めているため計画通りと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
温度と酸素供給条件を考察することにより心停止ドナー臓器の有効保存環境を作りだすことが明らかとなった。今後は究極の機能回復、再生の証明として移植実験での効果を行う予定である。しかしながら、移植手術については手術時間、麻酔状況、出血量、術後管理など複数の因子が実験に深くかかわる。現在は並行して移植による虚血再灌流を模擬して、灌流保存、単純冷却保存、両面から、保存終了後の肝臓を一度、wash outしたのちに、ドナー血液を希釈した灌流液を作製し、文献的考察に基づいた灌流条件により灌流装置を用いて保存終了後の肝臓の機能を判定するという虚血再灌流実験の確立を進め、現在検証を進めているところである。さらに、、心停止ドナーからの肝臓保存を移植実験をも行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
大学の耐震工事などによって動物実験室の移動を余儀なくされ、平成27年9月~平成28年2月まで使用できず、予算の執行が大幅に遅れたため。
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次年度使用額の使用計画 |
上記動物実験に関する諸経費として支出予定
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