研究課題/領域番号 |
25461942
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
三輪 祐子 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (90572941)
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研究分担者 |
岩崎 研太 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座講師 (10508881)
小林 孝彰 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座教授 (70314010)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 移植・再生医療 / 凝固系制御 / 異種移植 |
研究概要 |
【目的】臓器移植では、移植後のグラフトに対する傷害(虚血再灌流傷害、急性・慢性拒絶反応など)を抑制し、いかに長期生着を実現するかが課題となっている。私どもは,補体、凝固、炎症反応がグラフト傷害を憎悪させることに着目し、従来の免疫抑制療法とは異なる視点からグラフト保護を目的とした新しい治療法の開発をめざす。敗血症DICの治療薬として用いられているトロンボモジュリンは、凝固系の生理的調整因子として血管内皮細胞膜に存在し、抗補体、抗炎症作用を併せ持つことが報告されている。移植医療において,トロンボモジュリンの多機能性が臓器移植後のグラフトに対する傷害に有効であるかを評価する。 【方法】トロンボモジュリン発現クローンブタから採取したブタ血管内皮細胞(hTM-PAEC)に存在する膜型のトロンボモジュリン(MB-hTM)と可溶性トロンボモジュリン(S-hTM)の抗凝固作用、抗炎症作用の機能性の違いをTNFa存在下で刺激したPAECにおいて比較検討した。S-hTMはDICで使用される濃度を投与し,活性化protein C(APC)産生,pig tissue factor(TF),E-selectinの発現抑制,thrombinの産生抑制を指標にして比較した。 【結果】APCの産生上昇、トロンビン産生の抑制は、S-hTMが有意な効果を認めたが、血管内皮細胞膜上の外因性凝固反応のイニシエーターであるpig TF,また血管内皮細胞の炎症因子であるE-selectinの発現抑制は、MB-hTMが有意な効果を認めた。 【結論・考察】S-hTMの投与は、過剰なthrombin産生が予想される、移植直後の再灌流傷害などハイリスクな状況において有用な抗凝固作用が期待される。一方MB-hTMは、血管内皮細胞膜状での抗炎症効果が期待され、グラフトの長期生着に必要な因子と思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、トロンボモジュリン(TM)の血管内皮細胞における抗炎症・抗凝固作用の解明をin vitroにて解析する計画であったが、血管内皮細胞の膜型に存在するTM(MB-hTM)と可溶性トロンボモジュリン(S-hTM)の抗凝固作用、抗炎症作用の機能性の違いを比較しまとめ、学会発表を国際学会2回、国内発表を2回することができた。又この内容で、論文としてまとめ現在リバイス中である。
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今後の研究の推進方策 |
血管内皮細胞の膜型に存在するトロンボモジュリンと(MB-hTM)と可溶性トロンボモジュリン(S-hTM)の抗凝固作用、抗炎症作用の機能性の違いを解析した結果、S-hTMの投与は、過剰なthrombin産生が予想される、移植直後の再灌流傷害などハイリスクな状況において有用な抗凝固作用が期待される。一方MB-hTMは、血管内皮細胞膜状での抗炎症効果が期待され、グラフトの長期生着に必要な因子と思われる。この結果をふまえ、移植医療での、可溶性トロンボモジュリンの臨床応用、また膜型トロンボモジュリンの発現を誘導する薬剤(スタチン、)の導入の有効性を実証する戦略を考える。又異種移植の領域では、霊長類ーブタ間での主要異種抗原(alpha-Gal抗原)を抹消したGTKO-pigに、ヒト補体制御因子(hDAF)、ヒト抗凝固因子(hTM)が発現するブタの作成を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は細胞培養のin vitroの実験が主で、順調に研究は進行した。研究に利用する培養関連の消耗品(主にプラスチック製品)に予備があったため、年度内に購入する必要がなくなった。そのため、45,377円を繰り越すこととなった。 次年度の細胞培養の追加の実験において生じる消耗品購入に使用する。
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