研究実績の概要 |
研究目的 臓器移植では、移植後のグラフトに対する傷害(虚血再灌流傷害、急性・慢性拒絶反応など)を抑制し、いかに長期生着を実現するかが課題となっている。研究の歴史を繙くと、有効な保存液の開発、カルシニューリン阻害剤によるT細胞制御により、飛躍的に移植成績は向上し、近年では抗体関連型拒絶反応抑制のためのB細胞制御が注目されている。私たちは、補体、凝固、炎症反応が、グラフト傷害を増悪させることに着目し、従来の免疫抑制療法(免疫担当細胞の制御)とは異なる視点からグラフト保護を目的とした新しい治療法の開発をめざす。敗血症DICの治療薬として用いられているトロンボモジュリンは、凝固系の生理的な調整因子として血管内皮細胞膜に存在し、抗補体、抗炎症作用を持つ可能性が示唆されている。本研究では、トロンボモジュリンの特性を分子レベルで解析し、細胞膜発現レベルを調節する因子を見出す。異種移植用に開発したトロンボモジュリン発現クローンブタを用い、その多機能性が臓器移植後の様々な局面で有効であるか評価し、グラフト機能廃絶を阻止し長期生着を可能にする治療戦略を探索する。平成27年度は、主に異種移植のモデルであるブターヒヒ腎移植モデルによるhTMの凝固抑制効果を確認するためにヒト型トロンボモジュリン(hTM)が導入されたブタ(Gal ノックアウト、補体制御因子導入)の腎臓をヒヒに移植実験をし、hTM導入により移植臓器を長期生着に導くか確認する予定だったが、成果としてGTKO/hDAF/hTM pig作成に関して、Flow cytometryのsortingシステムによる、GTKO pigより採取したfibroblastにhDAF,hTMが高発現する細胞株の作成までは行うことができたが、核移植によるGTKO/hDAF/hTM pigの誕生にまで至らず、ブターヒヒ腎移植実験を行うことができなかった。
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