研究課題/領域番号 |
25461943
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
角 昭一郎 京都大学, 再生医科学研究所, 准教授 (80252906)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 糖尿病治療 / 間葉系幹細胞 / 膵島 / マクロカプセル化 / 電気的細胞融合 / 皮下血管新生 / 皮下移植 / ポリビニルアルコール |
研究実績の概要 |
膵島-間葉系幹細胞(MSC)融合細胞のスフェロイド形成を新規細胞塊形成デバイス(特願2014-34577)を用いて試みたところ良好なスフェロイド形成に至らなかったため、その原因を追求した。単細胞化した膵島とMSCの混合培養では、同一培養条件で良好なスフェロイド形成を認めたため、細胞融合操作によるバイアビリティーの低下がスフェロイド形成不良の主因との作業仮説を立て、膵島細胞の純度向上や融合操作の迅速化によって細胞融合操作後のバイアビリティーを向上させたところ、比較的良好な融合細胞のスフェロイドを得る目処が立った。 これと並行して、免疫隔離デバイスの組織適合性に関する検討を行い、ラットの皮下および腹腔内に原法であるポリビニルアルコール(PVA)ゲルのシートと、組織適合性の向上が期待されるエチレンビニルアルコール(EVOH)バッグ内でPVAをゲル化したもの(いずれも細胞成分は含まず)を埋め込んで、3ヶ月後にデバイスを回収して組織学的に検討した。その結果、PVAシートではデバイス表面に比較的厚い線維性被膜が形成され、デバイス周囲の異物反応もみられるのに対し、EVOHバッグではデバイス周囲の異物性炎症反応は非常に僅かで、デバイス表面の線維性被膜も比較的薄いことが確認された。なお、検討したEVOH膜は、株式会社クラレの研究所でEVOH膜開発を担当した岡山理科大学の中路教授より提供を受け、バッグの作成法を我々が独自に開発したものである。 現在、融合細胞のスフェロイド形成とその後の培養実験を行っているが、融合細胞スフェロイドは新規細胞塊形成デバイス中で少なくとも2週間は培養可能であり、この間に比較的良好なスフェロイドを形成できることを確認しつつある。また、デバイスの改良についても、組織反応改善効果を狙って多孔性EVOHシートを作成中で、入手でき次第、融合細胞スフェロイドを組み込んだEVOHデバイスを作成して検討することとしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
膵島-MSC融合細胞でスフェロイドの形成に手間取ったことが遅れの最大原因である。ただし、これについては融合細胞のバイアビリティーを改善することに成功したことで、比較的良好なスフェロイドを形成できる目処が立った。 一方、免疫隔離デバイスについては、原法のPVAゲルシートに比べてEVOHバッグの組織適合性が格段に良好である事が判明した。このため、原法での融合細胞スフェロイド包埋は取りやめて、EVOHバッグ内でPVAゲルにスフェロイドを包埋する方法を目指すこととした。この点でも、EVOHバッグの作成に時間を要しており、目標とする移植実験が行える段階には至っていない。 また、マクロカプセル化MSCによる皮下血管新生については、マクロデバイスの材質見直しを先行させている関係で検討が進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
まず、膵島-MSC融合細胞の安定的なスフェロイド化を確認する。この中で、融合細胞単独でのスフェロイド形成が安定的に得られない場合は、最近特に注目を集めているリコンビナントあるいは人工合成により作成された細胞外マトリクス分子の活性部位を含む各種製剤の利用によるスフェロイド形成の促進についても検討を行う。スフェロイドの安定的な形成方法を確立した後、非スフェロイド化融合細胞や膵島細胞とMSCの混合培養によるスフェロイドを比較対象として、スフェロイド化融合細胞のβ細胞機能や増殖能の検討をin vitroで行い、その優位性を検討する。これが確認された後、まずは融合細胞スフェロイドの同系皮下移植による糖尿病治療実験を行い、膵島・MSC共移植(混合培養により作成したスフェロイド)との比較で移植効果を比較検討する。 目値期隔離デバイスの改良には多孔性EVOH膜の作成が前提となるが、この点では、岡山理科大学の中路教授と連携して作成を行っており、クラレ研究所の協力も得ながら膜透過性等の確認を行う。良好な透過性を有するEVOH膜が得られた段階で、膵島-MSC融合細胞スフェロイドを包埋したPVAゲル含有EVOHバッグを作成し、in vitroの機能確認の後に、同種移植実験でその妥当性を確認する。 皮下血管新生については、今回提案しているMSC含有PVAシートによる方法と、過去に実績がある塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)の徐放化による血管新生前処置とを、EVOHバッグに特化させた形で比較検討する計画を立てている。MSCを用いる方法では、MSCのカプセル化に手間と時間を要するのに比し、bFGFをコラーゲンシートに吸着させて徐放化する方法では、スペーサーとして細胞等を含まないEVOHバッグを使用することで省力化が可能であり、新生血管融合効果を比較して総合的にどちらを採用するか判断する予定である。
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