膵島-間葉系幹細胞(MSC)融合細胞のviabilityを向上させることに成功し、新規細胞塊形成デバイス(特願2014-34577)を用いて良好なスフェロイドを形成できた。 免疫隔離デバイスの組織適合性に関する検討を行い、ラットの皮下および腹腔内に原法のポリビニルアルコール(PVA)ゲルのシートと、組織適合性の向上が期待されるエチレンビニルアルコール(EVOH)バッグ内でPVAをゲル化したものを埋め込んで、3ヶ月後と6ヶ月後に検討した。その結果、PVAシートではデバイス表面に厚い線維性被膜が形成されるのに対し、EVOHバッグではデバイス周囲の異物反応は非常に僅かで、表面の線維性被膜も非常に薄いことを確認した。EVOH膜自体はガスに対するバリアー性が非常に高いため、開口率の高い多孔質EVOH膜の作製に取り組みこの作製にやや手間取った。その結果、研究期間中に多孔質膜でバッグを作製することができず、細胞集塊の充填には至っていない。 皮下血管新生誘導に関しては、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を含浸させたコラーゲンシートと空のEVOHバッグを重ねて皮下移植することにより、良好な血管新生を惹起できるとともに、EVOHバッグは癒着無く容易に回収できる事を確認した。EVOHバッグを同時に埋入することで、膵島を含むEVOHバッグを移植するためのスペースを確保することが可能で、空のバッグを膵島を含むバッグに交換する形で容易に移植を行うことができるものと想定された。 また、バッグ内には凍結/解凍にて作製したPVAハイドロゲル内に包埋した膵島(あるいは膵島-間葉系幹細胞融合細胞集塊)を入れる予定であったが、この方法では、凍結/解凍によるある程度の細胞障害が避けられないため、過去の我々の実験で異種移植に成功した実績のある温度感受性キトサンゲルを応用する方向で今後の検討を進める予定である。
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