研究課題/領域番号 |
25461946
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
川本 弘一 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教(常勤) (30432470)
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研究分担者 |
和田 浩志 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00572554)
濱 直樹 独立行政法人国立病院機構大阪医療センター(臨床研究センター), その他部局等, 研究員 (00645723)
永野 浩昭 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10294050)
小林 省吾 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター(研究所), その他部局等, その他 (30452436)
秋田 裕史 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター(研究所), その他部局等, その他 (70528463)
江口 英利 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90542118)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ADSC / 条件培地 / BETA2/NeuroD1 / インスリン |
研究実績の概要 |
課題2 では、体性幹細胞の1種である、脂肪由来間葉系幹細胞(Adipose-derived mesenchymal stem cells; ADSCs)を幹細胞のソースとして用い、ADSCから新規β細胞を誘導する方法の確立を目標として実験計画を立案した。基礎実験として、B6 マウスの皮下脂肪よりADSC を、コラゲナーゼ法を用いて採取、必要に応じて凍結保存した。in vitro で培養したADSC にレンチウイルスベクターを用いて膵臓関連転写因子(BETA2/NeuroD1, PDX-1, Ngn3)を導入したが、これらの転写因子のみでは、インスリンmRNAの検出は不可能であった。 次に、インスリノーマ細胞株から作成した条件培地を用いてparental ADSCおよび転写因子を導入したADSCを培養したところ、いずれの群においてもインスリンmRNAの検出が可能となった。一方、膵癌細胞株から作成した条件培地を用いた場合はインスリンmRNAは検察されなかった。さらに、定量的PCRにおいても、転写因子を導入し、条件培地で培養した群においては、転写因子を導入していないADSCを条件培地で培養したコントロールと比較しても、mRNAが増幅していた。特に、BETA2/NeuroD1を導入したADSCと条件培地の組み合わせが、有意にmRNAレベルの増加を認めていた。また、細胞内インスリン含有量でも、ADSCと比較して、インスリンタンパクを検出可能であった。細胞表面マーカー解析では、間葉系マーカーの低下と、膵前駆細胞マーカー(Sca-1)の増強を確認した。 以上より、BETA2/NeuroD1を導入し、インスリノーマ細胞株より作成した条件培地を用いる方法の有効性が示唆された。今後は、in vivoでの有効性を解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、研究目的を達成するために、2つの研究課題を中心に基礎研究を展開し、得られた研究成果を実際に臨床応用する手法を採用している。課題2 では、脂肪由来間葉系幹細胞(Adipose-derived mesenchymal stem cells; ADSCs) から新規β細胞誘導法の確立を目標としている。基礎実験として、B6 マウスの皮下脂肪よりADSC を採取、in vitro で培養したADSC にレンチウイルスベクターを用いて膵臓関連転写因子(MafA, PDX-1, Ngn3)を導入した。これらの転写因子を導入するのみでは、インスリンmRNAの検出は不可能であった。しかし、インスリノーマ細胞株から作成した条件培地を用いて転写因子を導入したADSCを培養したところ、インスリンmRNAの検出が可能となり、さらに各種転写因子を導入していないADSCを条件培地で培養したコントロールと比較しても、mRNAが有意に増幅していた。また、インスリン含有量でも、ADSCと比較して、有意にインスリンタンパクを検出可能であった。またFACSにて細胞表面マーカーの解析を施行したところ、間葉系マーカーの低下と、膵前駆細胞マーカーの増強も確認した。2年目でインスリン産生細胞を誘導できているので、当初の計画以上に進展していると判断した。ただし、マウスでの効果は一部が解明されたに過ぎないので、次年度以降はこれまでの方法との比較も可能な範囲で検討し、真に有効な方法を同定し、臨床応用への橋渡しとしたい。またマウスモデルで有望な結果が得られれば、中・大動物実験ないしは、臨床膵島移植への応用等の戦略を検討したい。
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今後の研究の推進方策 |
今回、in vitroでの転写因子と条件培地を用いた方法の有効性が示されたため、次年度以降では、実際に糖尿病モデルマウスにおけるin vivoでの効果を解析予定である。レシピエント候補として、ストレプトゾトシン(STZ)を用いて糖尿病化したマウス、ないしはAkitaマウスを購入し用いる。Akitaマウスを用いる場合は、ヘテロマウスを購入し、ワイルドタイプと交配し、空腹時血糖値より高血糖を認めるマウスをヘテロマウスとして使用する予定である。この場合、DNAジェノタイプの解析は不要である。STZを用いる場合は、B6マウスに腹腔内注射し、1週間目以降に早朝空腹時血糖を測定し、糖尿病化の有無を確認、糖尿病化に成功したマウスを移植実験に使用する。Akitaマウスを用いる場合も、ヘテロマウスとB6マウスを交配し、血糖値の上昇を確認し、ヘテロマウスを同定、同様に移植実験に供与する。 BETA2/NeuroD1を導入したADSCを条件培地で培養後、レシピエントマウスの腎被膜下に移植する。定期的に早朝空腹時血糖値を測定する。細胞移植を受けた腎臓を摘出し、組織学的に解析する(インスリン染色等)。マウス実験で有効性が証明された場合は、中・大動物実験の施行も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
インスリノーマ細胞株から作成した条件培地を用いて転写因子を導入したADSCを培養したところ、インスリンmRNAの検出に必要な物品を購入したため。
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次年度使用額の使用計画 |
糖尿病モデルマウスにおけるin vivoでの効果を解析するのに必要なマウス等を購入するため。
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