研究課題/領域番号 |
25461947
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
篠浦 先 岡山大学, 大学病院, 助教 (40379772)
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研究分担者 |
貞森 裕 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (30362974) [辞退]
高橋 英夫 近畿大学, 医学部, 教授 (60335627)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | DAMP / 外科侵襲 / 臓器障害 / HMGB-1 / 肝再生 |
研究実績の概要 |
1.動物実験モデルでのHMGB-1複合体をターゲットとした手術侵襲・臓器障害の制御 ラット肝臓の虚血再灌流障害(I/R injury)+肝切除モデルにおいて、High mobility group box-1 (HMGB-1)を主体としたdamage associated molecular pattern molecules (DAMPs)複合体が虚血再灌流障害、肝再生に及ぼす影響を解析し、抗体療法による制御を試みた。抗HMGB-1抗体の投与によって、再灌流直後から術後24hにかけての肝細胞内外でのHMGB-1の強発現が抑制され、温阻血再灌流障害が軽減された。また、温阻血再灌流障害によって肝細胞肥大が主体であった肝再生様式が、抗体療法によって肝細胞増殖主体の肝再生にシフトする所見を得た。肝細胞内のシグナル伝達解析では、抗体療法によってリン酸化STAT3の発現増強と共に細胞肥大に関与するp21の抑制が認められた。そして、上記実験モデルにおいて抗体療法による生存率の改善を認めた。
2. 手術侵襲時のDAMP複合体を介した免疫担当細胞内シグナル伝達の制御 近年、虚血障害から臓器修復の機構には血管新生が重要な役割を果たしているが、血管新生を担うマクロファージが着目されている。局所の血管新生において、そのフェノタイプであるマクロファージM1優位からM2優位へ変化する機序が知られている。術後管理の要点は、M1⇄M2変化のモニターリングによるコンパニオン診断や、この変化自体をコントロールすることにある。DAMP複合体を構成する重要因子の一つのHMGB1の炎症反応における役割はまだ明らかではないが、本年度の研究でM1あるいはM2の分化を増強して、マクロファージによる血管新生調節効果をもつことの示唆を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においては、HMGB-1を主体としたDAMPs複合体が手術侵襲時の免疫応答に及ぼす影響を解析し、DAMPs複合体を制御することによって、外科侵襲時における新たな臓器障害の制御システムの確立を目指している。まず動物実験では、肝臓のI/R injury+肝切除モデルを用いて虚血再灌流障害・肝再生過程におけるHMGB-1を主体としたDAMPs複合体の機能・動態を解析し、抗体療法に制御を試みた。その結果、虚血再灌流障害によってHMGB-1は、再灌流直後から肝細胞内外で強発現すると共に、肝再生においては肝細胞増殖が抑制され、残肝の肝細胞の肥大を認めた。そして、抗体療法によるDAMPs複合体の制御によって、虚血再灌流障害の軽減を認めると共に、肝再生様式が肝細胞肥大から肝細胞増殖にシフトする所見を得た。さらに、シグナル伝達解析では、抗体療法によってリン酸化STAT3の発現増強と共にp21の抑制が認められた。また、抗体療法による生存率の改善を認めた。In vitroでは、免疫担当細胞を抽出し、HMGB-1を主体としたDAMPs複合体によって免疫担当細胞を活性化し、単球/マクロファージ上の細胞接着因子の発現、各種サイトカインの産生能、Tリンパ球の増殖反応を解析すると共に、HMGB1がM1あるいはM2の分化を増強して、マクロファージによる血管新生調節効果をもつことの示唆を得た。
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今後の研究の推進方策 |
肝臓のI/R injury+肝切除モデルにおいて、HMGB-1を主体としたDAMPs複合体に対する抗体療法によってI/R injuryが軽減される共に、肝再生過程においては肝細胞肥大主体から肝細胞増殖主体にシフトする所見を得た。さらに、抗体療法の肝細胞内シグナル伝達への影響を解析し、抗体療法による生存率の改善を認めた。今後は、外科侵襲時におけるDAMPs複合体を介した臓器障害および組織修復・再生メカニズムをさらに解析し、制御システムの確立を模索していく方針である。In vitroでは、HMGB-1を主体としたDAMPs複合体によって免疫担当細胞を活性化し、単球/マクロファージ上の細胞接着因子の発現、各種サイトカインの産生能、Tリンパ球の増殖反応を解析すると共に、HMGB1がM1あるいはM2マクロファージの分化を増強して、マクロファージによる血管新生調節効果をもつことの示唆を得た。今後も、HMGB1のマクロファージ分化とその効果を検証し、申請薬物やnative蛋白由来のメディエーターの中にM1M2間のコントロールするものを探索する方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入物品(実験動物、抗体等)が予想より少ない量で結果を得たため、また、学会報告が無く、旅費の計上が無かったため。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究結果の誌上および学会での発表および必要と思われる追加実験の物品費としての使用。
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