研究課題
本研究では、damage associated molecular pattern molecules (DAMPs)複合体の手術時の免疫応答の解析により、新たな手術侵襲に対する臓器障害制御システムの確立が目的であった。ラット肝臓の虚血再灌流障害(ischemia/reperfusion injury: IRI)+肝切除モデルにおいては、DAMPsの中でHigh mobility group box-1 (HMGB-1)に注目し、虚血再灌流障害、肝再生に及ぼす影響を解析し、抗体療法による制御を試みた。抗HMGB-1抗体の投与によって、肝細胞内外でのHMGB-1の強発現が抑制され、肝臓の阻血再灌流障害が軽減された。また、阻血再灌流障害後の肝再生は肝細胞肥大が主体であったが、抗体療法によって肝細胞増殖主体の肝再生にシフトする所見を得た。この変化は、リン酸化STAT3の発現増強とp21抑制によるものと考えられた。上記実験モデルにおいて抗体療法による生存率の改善を認めた。in vitroでは、 HMGB1がM1あるいはM2の分化を増強して、マクロファージによる血管新生調節効果に重要な役割を果たしている知見を得た。HMGB1制御することにより、肝切離を伴う肝阻血再灌流障害の状態を改善していく可能性があることを示唆している。そのメカニズムは局所の血管新生の制御とSTAT3、p21を介した肝再生様式の変化によるものと考えられた。
すべて 2016
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American Journal of Surgery
巻: Jan;211(1) ページ: 179-188