研究課題/領域番号 |
25461961
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
小見山 博光 順天堂大学, 医学部, 講師 (30348982)
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研究分担者 |
服部 浩一 順天堂大学, 医学(系)研究科, 特任先任准教授 (10360116)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 炎症性腸疾患 / マトリックスメタロプロテイナーゼ / 線維素溶解系 / 炎症性サイトカイン / プラスミン阻害剤 / TNFα / 潰瘍性大腸炎 / クローン病 |
研究概要 |
潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease; IBD)は,腸管粘膜に炎症を引き起こす難治性腸疾患である.その病態には,白血球あるいは間質細胞が分泌する(TNFαなどの)炎症性サイトカインの重要性が広く認知されている.本研究では,この活性化調節にマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)などの蛋白分解酵素が関与していることに着目した.そしてMMPの活性化を制御している線維素溶解系(線溶系)因子群を線溶系阻害剤の投与により制御することで,炎症性サイトカインの分泌抑制,そして白血球の組織内浸潤抑制の可能性の探索,すなわちIBD病態制御機構の解明と新規IBD治療法開発の基盤形成までを目的とする. 今年度の研究で,2%デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)溶液を飲水させることによるDSS大腸炎モデルマウスを作製し,線溶系阻害剤による炎症抑制効果の評価を行った.その結果,線溶系阻害剤を投与することによって,白血球の腸管粘膜への浸潤抑制,腸管構造の維持,炎症抑制に効果があることを明らかにした. 現在,末梢血を対象に,線溶系阻害剤がどの血球成分(細胞)に作用することで炎症性サイトカインの分泌抑制を引き起こしているのか,より詳細に評価し,線溶系抑制に伴うMMP活性抑制を介したIBD病態改善に至るまでの分子メカニズム,シグナルパスウェイを解明することで,線溶系阻害剤の作用機序を明らかにすることを目的として研究を継続している.古くからあるMMP阻害剤は欧米での治験で深刻な副作用のために臨床応用が中止されており,本研究はそれに変わる新たな治療薬の可能性を示唆するものとして重要な役割を担っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,腸炎モデルマウスを用いて,炎症性サイトカインの活性化調節,マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)などの蛋白分解酵素の活性化調節に関与することが期待される線維素溶解系(線溶系)因子群を線溶系阻害剤の投与により制御することで,IBD病態制御機構を明らかにすることと,新規IBD治療法開発の基盤形成までを目的としている. 線溶系因子に着目し,Plasminogen (Plg),MMP-9遺伝子欠損マウス(Plg-/-, MMP-9-/-)及びその野生型マウス(Plg+/+, MMP-9+/+, Wild) を用いてDSS大腸炎モデルマウスを作製した.同様に,C57BL6/Jマウスを用いて,新規プラスミン阻害剤(YO-2)投与群と溶媒(PBS)投与群にわけてDSS大腸炎モデルマウスを作製した.これらのマウスについてYO-2投与による病態改善効果(体重,生存率,腸管構造,白血球浸潤)が確認された. YO-2投与群やMMP-9-/-,Plg-/-において実際に炎症が起こっていないのかどうか,炎症性サイトカインの分泌についてELISA法による検討を行い,炎症性の抑制が確認された.消YO-2投与によって炎症部位に対する白血球の浸潤がどのように変化しているのか免疫染色法ならびにFACS解析により検討を行い,良好な結果が確認された.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,プラスミン阻害剤の炎症抑制効果について,ELISA法による評価を行えた.次年度以降は,FACS解析を中心に,組織ならびに末梢血中におけるプラスミン阻害剤の標的細胞の特定することを目的とし,線溶系による炎症制御の分子メカニズムの解明に取り組んでいく.
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次年度の研究費の使用計画 |
MMP-9-/-,Plg-/-において実際に炎症が起こっていないのかどうか,炎症性サイトカインの分泌についてELISA法による検討を行ったが,順調に良好な結果がでたため,使用する試薬を最小限にすることが可能であった.また,購入予定であった,パソコンの購入を来年度以降に持ち越したため.来年度以降はFACS解析を中心に,組織ならびに末梢血中におけるプラスミン阻害剤の標的細胞の特定することを目的とし,線溶系による炎症制御の分子メカニズムの解明に取り組んでいく. 次年度以降は,FACS解析を中心に,組織ならびに末梢血中におけるプラスミン阻害剤の標的細胞の特定することを目的とし,線溶系による炎症制御の分子メカニズムの解明に取り組んでいく.これにより,プラスミン阻害剤が標的とする血球が炎症性サイトカインを産生する上で,線溶系を介したMMP等の蛋白分解酵素に直接支配されているのか,あるいはその血球周囲の細胞からの上流シグナルを介した間接的な支配なのか,その分子メカニズムについてさらに解析を進める.
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