研究課題
本研究では,クローン病や潰瘍性大腸炎といった炎症性腸疾患(IBD)の病態には,白血球あるいは間質細胞が分泌する(TNFαなどの)炎症性サイトカインの重要性が広く認知されており、その活性化調節には、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)などの蛋白分解酵素の関与が報告されていることに着目した。そして、MMPの活性化を制御している線維素溶解系(線溶系)因子群を(線溶系阻害剤を投与することにより)制御し、炎症性サイトカインの分泌抑制、そして白血球の組織中への動員を抑制する可能性を有することから、新規IBD 治療法開発の基盤形成までをその目的の範疇とする。今年度の研究で、研究代表者らは、2%デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)溶液を飲水させることによるDSS大腸炎モデルマウスを作成し、血液中においてMMPの活性化とサイトカイン血中濃度増加が認められること、さらに線溶系阻害剤を投与することにより、白血球の腸管粘膜への浸潤抑制,腸管構造の維持,炎症抑制に効果があること明らかにした。現在、線溶系阻害剤が末梢血中のどの血球成分に作用することで炎症性サイトカインの分泌抑制を引き起こしているのかをより評価し,さらに,線溶系抑制に伴うMMP活性抑制の結果として,IBD病態改善に至るまでの分子メカニズム,シグナルpathwayを解明することで,線溶系阻害剤の作用機序を明らかにすることを目的として研究を継続している。MMP阻害剤は、欧米での治験で深刻な副作用のために臨床応用が中止されており、また、本研究はそれに変わる新たな新規治療薬の可能性を示唆するものとして重要な役割を担っている。(
2: おおむね順調に進展している
本研究では,腸炎モデルマウスを用いて,炎症性サイトカインの活性化調節,マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)などのたんぱく分解酵素の活性化調節に関与することが期待される線維素溶解系因子群を線溶系阻害剤の投与により制御することで,IBD線溶系因子に着目し,plasminogen,MMP-9遺伝子欠損マウス(Plg-/-,MMP9-/-)及びその野生型マウス(Plg+/+,MMP9+/+,wild)を用いてDSS大腸炎モデルマウスを作成した.これらのマウスについて YO-2等投与を行い,病態改善効果を明らかにした.また,血清中および大腸粘膜におけるTNFα,血清中のMMP9も測定しYO-2投与群においてこれらが低下していることを明らかにした.
本研究では,すでに線維素溶解系因子と腸炎病態解明のためのモデルマウスとしてDSS大腸炎モデルマウスを用いた結果,YO2投与群のほうが病態改善効果があることを明らかにしてきたが,それ以外の腸炎モデルマウス(TNBS,CD40)も作成し,YO-2投与群と非投与群の比較解析を行い,病態改善効果を測定する.これにより,多種の腸炎モデルマウスでの評価が可能となる.
本年度は,DSS大腸炎モデルマウスを用いて,炎症性サイトカインの活性化調節,マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)などのたんぱく分解酵素の活性化調節に関与することを明らかにした.本年度は,DSS大腸炎モデルマウスのnを増やし,DSS以外の腸炎モデルマウスは次年度以降に持ち越したため.
DSS大腸炎モデルマウス以外の腸炎モデルマウス(TNBS,CD40)を作成し,YO-2投与群と非投与群の比較解析を行い,病態改善効果を測定する.
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
Gastroenterology.
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http://www.juntendo.ac.jp/graduate/laboratory/labo/kabusyoukakan/