研究課題/領域番号 |
25461965
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
平方 敦史 日本医科大学, 医学部, 助教 (40468765)
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研究分担者 |
山田 和彦 鹿児島大学, 医用ミニブタ・先端医療開発研究センター, 教授 (40241103)
佐原 寿史 鹿児島大学, 医用ミニブタ・先端医療開発研究センター, 准教授 (90452333)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 移植・再生医療 / 腎移植 / 肺移植 / 一酸化炭素 / マージナルドナー / 前臨床実験 / ミニブタ / 臓器保護 |
研究実績の概要 |
深刻なドナー不足に対するドナー適応拡大の際は、虚血再灌流障害IRIによる急性臓器不全や急性・慢性拒絶の発生増加が懸念される。種々の細胞保護効果を有する一酸化炭素COに着目し、炎症前駆物質の活性化が組織傷害を惹起する脳死ドナー個体や臓器へのCO投与による臓器保護効果に基づいた、ドナー拡大および移植成績の向上を目指す前臨床研究を、詳細な免疫反応評価が可能な組織適合性抗原MHC確立ミニブタを用いて、平成26年度も継続して実施した。 平成25年度に得られた、「脳死ドナー(脳死時間6時間)からの肺移植時に、脳死ドナーに対して3時間のCO投与を行うだけで治療効果が得られた」という結果が、腎移植時にも同様であるかについて検討を開始した。脳死後3時間を経たドナーに対し、CO吸入(吸入濃度200-250ppm;血中COHb濃度≦15%)3時間を行った後に腎臓を摘出しMHC不適合間レシピエントに対し移植を行ったところ、術後の血清Cre値(mg/dl)は1.46(POD1)、2.12 (POD2)であり、非脳死ドナー腎移植の平均Cre値2.8(POD1)、2.4(POD2)に対し、抑制効果を認めた。組織学的にも再灌流1時間後、POD2の腎生検で、IRIの指標である尿細管障害が顕著な抑制を呈した。 更に、脳死ドナー臓器の体外灌流保存中のCO投与による治療効果の検討(計画書目的2)に着手した。脳死後3時間を経た動物から臓器を摘出し、3時間体外灌流保存を行い、その間に3時間のCO吸入(上記と同様の設定)を行った後に肺移植を行ったところ、術後IRIの軽減効果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、①脳死ドナーに対するCO投与が、術後の移植腎機能障害を抑制する可能性を示しえたこと、②さらに、体外灌流保存中にドナー臓器にCOを投与することによって、術後虚血再灌流障害を制御できる可能性を明らかにしたこと(肺移植モデル)から、今後、上記①②については症例を重ねること、さらに②の体外灌流保存中のCO投与に関する移植実験を進め、腎移植モデルに対しても肺移植実験の手法を応用しうるという観点から、円滑な課題の推進が可能である。したがってこれらの課題については、最終年度までに研究課題の達成をはかることが十分可能であり、極めて順調に進展しているものと判断する。 一方、ガスとしてのCO投与の代替的投与法であるCO放出物質CO-releasing molecule(CORM)の効果を検討という点ではやや遅れを生じていることから、平成27年度の重点課題とする必要があるものの、以上の点をふまえて、研究課題全体としてはおおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に結果がえられた、①脳死ドナーに対するCO投与が、術後の移植腎機能障害を抑制する可能性を示しえたこと、②体外灌流保存中にドナー臓器にCOを投与することにより、術後虚血再灌流障害を制御できる可能性を明らかにしたことの2点ついては症例を重ね、課題に対する結論を得る。さらに、体外灌流保存中のCO投与に関する実験については、肺移植実験の方法に準じて腎移植実験も並行して行うことによって、研究課題の達成をはかる方針である(これらの実験はいずれも、平成25年度、26年度と同様に脳死ドナーからのMHC完全不適合間ミニブタ移植モデルをたんきかん免疫抑制剤使用下に行う)。 さらに、ガス吸入は、臓器間で効果に相違が生ずる可能性があること、またより簡便な方法による臨床応用性を考慮すると、CO吸入はより安全性に配慮した方が好ましいという観点から、代替的投与法のとして、CO放出物質CO-releasing molecule(CORM)を脳死ドナーへ投与し、効果を検討する。CORMは投与後体内でCOを産生するため投与に伴う安全性は高く、これまでの実験報告からCO吸入と同様の効果が得られることが期待されるものの、CO吸入とCORM投与の有効性を直接的に比較した検討はない。そこで平成25年度、26年度に行った実験モデル(脳死6時間後のドナー臓器を用いたMHC完全不適合間ミニブタ移植実験)を用いて、有効性の解明をはかる。
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次年度使用額が生じた理由 |
体外灌流保存中にCOを投与する実験については、灌流装置に関する消耗品費用が高額となるため(特に人工肺の費用)、平成26年度中は慎重に実験を進め、当初は並行して行う予定であった腎移植実験は行わず、肺移植実験での検討のみにとどめた。このため、消耗品に対する支出が計画よりも少額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、上記の体外灌流保存中のCO投与効果を検討する実験が主体となり、かつ肺移植モデル、腎移植モデルともに別々の回路を組み立てて実験を進める必要がある。このため、使用する体外循環回路に要する消耗品費用が高額になることが予想される。このような理由から、年度内の適切な研究費執行が可能であると考えている。
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