研究課題
基盤研究(C)
近年、生活習慣病に関連して成人の8%程度は非アルコール性脂肪性肝疾患(non alcoholic fatty liver disease :NAFLD)であると言われており、脳死および生体肝移植ドナーの脂肪肝に遭遇する機会は多い。しかし脂肪肝グラフトは移植後十分に機能せず、グラフト機能不全が高率に発症する事が最大の難点であり、特にグラフトサイズに制限のある生体肝移植ではグラフト機能障害はさらに顕著となり、良好な肝再生を得ながらこれらの諸問題を順次克服していかなければ移植成績の向上はなし得ない。以前よりわれわれは高脂血症治療薬として汎用されているスタチン系薬剤(HMG-CoA還元酵素阻害薬)が持つ多面的効果 (pleiotropic effect)、特に血管内皮機能改善作用と免疫抑制機能に着目し、過小グラフト肝移植におけるスタチンのグラフト機能保護効果を研究した結果、肝移植後のグリソン鞘周囲の炎症細胞浸潤が軽減され、虚血再灌流障害を軽減する傾向がある事を明らかにしてきた。つまり肝移植においてもスタチンがグラフト機能保持に有用である事が判明しつつあり、これを脂肪肝グラフト移植克服にも適応可能ではないかと考えた。NAFLDグラフト肝移植に対するスタチンの使用報告例がなく未知な部分が多いが、スタチンが持つpleiotropic effectの中でも特に抗酸化・抗炎症作用と血管内皮機能改善作用、脂肪沈着抑制作用に着目し、より簡便で非侵襲的な方法で脂肪肝グラフト移植後の類洞内皮障害軽減と脂肪変性軽減・門脈圧制御が可能となると考えられる。より簡便で非侵襲的な方法で脂肪肝グラフト移植後の類洞内皮障害軽減と門脈圧制御および良好な肝再生が実現し、グラフト機能保護が達成できるのではないかと考えている。当該研究では脂肪肝過小グラフト肝移植におけるスタチンの作用・効果を解明する予定である
3: やや遅れている
現在、ラット高度脂肪肝(NAFLD)グラフト移植モデルの作成を行っているが、肝障害の遷延するほどのNAFLDグラフトの作成が安定しない状況である。移植後、速やかに脂肪肝が正常な状態に戻ってしまう個体があるので、薬剤の効果判定に適さないと考えられる。肝障害を伴う脂肪肝グラフトの安定した作成を目指して、食餌摂食期間や量・種類などを変更しながらモデルの改良を行っている最中である。
安定したラット高度脂肪肝(NAFLD)グラフトの作成をいち早く確立し、50%部分肝移植モデルや30%部分肝移植モデルといったよりcriticalな過小グラフト移植におけるスタチンの効果を解明していく方針である。NAFLDに対する治療法として、スタチンの有用性についての報告例は徐々に散見されるようになってきてはいるが、スタチンがどのように脂肪肝グラフト移植におけるグラフト機能不全を改善するかは解明されておらず、過小グラフト移植における本薬剤の有効性が示せれば、脂肪肝ドナーの分割グラフト移植の成績向上の一助となり、ドナー不足の状況を大幅に改善する可能性を秘めていると考える。
試薬等の購入には少額であるため、次年度分と合わせ有効利用することとした。レシピエント・ドナー手術のためのラットとMCDD(メチオニン・コリン欠損食)の購入、各種試薬の購入を行い、モデル作成および解析を進めていく予定である。
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