研究課題/領域番号 |
25461968
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
阪本 靖介 熊本大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (00378689)
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研究分担者 |
笠原 群生 独立行政法人国立成育医療研究センター, その他部局等, その他 (30324651)
上本 伸二 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40252449)
猪股 裕紀洋 熊本大学, その他の研究科, 教授 (50193628)
小倉 靖弘 名古屋大学, 医学部附属病院, 准教授 (20335251)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 脳死臓器提供 / 分割肝移植 / ドナー / レシピエント |
研究実績の概要 |
本邦における脳死肝臓提供数は依然として肝移植を必要とする末期肝疾患患者数を凌駕する提供数には至っていない。また、分割脳死肝移植はドナープールを拡大する有効な手段となりうるが、明確な分割肝移植基準がないままに現在まで少数の症例に施行されてきた。本研究では、①本邦における分割脳死肝移植の脳死ドナー基準作成、②同レシピエント基準作成、③分割肝移植手技の標準化を目的とし、慢性的脳死ドナー不足の解消に努めることを目的として開始した。 平成25年度は、ドナー基準を明確とするために、①諸外国における分割肝移植の脳死ドナー基準の調査、②本邦において実際に施行された脳死ドナーのうちで、諸外国のドナー基準に照らし合わせた場合にどれだけの症例がそれらの基準に満たしうるかを検討した。①諸外国における分割肝移植の脳死ドナー基準調査では、ドナー年齢・ICU管理期間・肝臓の状態などにおいて明確な基準作りがなされており、基準に合致する場合には積極的に分割肝移植を施行されるように臓器分配が進められていた。②諸外国基準に照らし合わせた検討では、2013年8月までの脳死下肝臓提供121例において、英国基準では18例(14.9%)、米国基準では10例(8.3%)、韓国基準では4例(3.3%)であった。 平成26年度は本邦で事項された分割肝移植レシピエント症例における予後調査を行った。2014年12月末までに施行された脳死肝移植257例中36例(14.0%)に分割肝移植が11施設にて施行された。多くの場合が小児レシピエントが待機順位1位のために分割肝移植が施行された。1例を除きすべてがEx-vivo splittingの手法にて分割がなされた。レシピエント術後合併症の頻度は17例(48.6%)で、胆管合併症の頻度が最も多く、特に右側肝臓を用いられた症例に高頻度であったが、グラフト生存率は3年87.1%と良好であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の達成目標として、本邦にて実際に施行された分割肝移植レシピエント予後調査を主要なもとして選定し、各実施施設にレシピエント予後調査表をアンケート様式で送付し全症例のデータを集積しえた。分割肝移植を施行した理由・レシピエントの術前状態・グラフトの状態、グラフト予後(生存率、合併症の内容・頻度、術後肝機能推移など)を解析した結果、合併症頻度が比較的高いことが判明したが、グラフト予後においては全肝を使用した脳死肝移植あるいは生体肝移植の成績と比較して遜色のないものであることが明るみとなった。 一方、分割肝移植手技の標準化を目的とする検討においては、平成27年度に開催される肝移植関連学会にて本研究内容を発表することにより、実施他施設と検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度検討項目(本邦における脳死ドナー情報の集積と解析)・26年度検討項目(本邦における分割肝移植レシピエント予後調査)を継続して進めていくとともに、分割肝移植手技の標準化を目的として、海外における標準分割肝移植手技に関する情報収集を行う。本年度末には、本邦における分割肝移植ドナー基準・レシピエント基準・分割肝移植標準術式の作成(少なくともひな形となるもの)を作成する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に予定していた研究代表者の熊本大学異動に伴い、海外においての分割肝移植手技習得のための学会等への参加が不可能となったことにより、実支出額が予定より下回った。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度においては、海外においての分割肝移植手技習得のための学会等への参加を積極的に行い、また分割脳死肝移植のドナー基準およびレシピエント基準の最終案作成のための班会議開催を計画している。
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