研究課題/領域番号 |
25461969
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中村 透 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70645796)
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研究分担者 |
平野 聡 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50322813)
土川 貴裕 北海道大学, 大学病院, 助教 (50507572)
田中 栄一 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (60374279)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 膵癌新規分子標的治療 / 細胞膜透過性ペプチド治療 |
研究実績の概要 |
前年度作成したCBPCIラビットポリクローナル抗体を用い、膵癌臨床検体におけるCBPCI発現状況ならびに予後との相関について検討した。膵癌臨床検体は教室で切除した膵癌99検体から作成したTissue microarray(TMA)を使用した。結果、CBPCIは膵癌症例の56.8%で高発現していた。臨床病理学的検討から、CBPCI高発現は術後全生存期間と強い相関があり、低発現と比較し予後不良であった。多変量解析では、リンパ節転移陽性とCBPCI高発現の2因子が独立した予後規定因子であることが判明した。CBPCIは膵癌の悪性度に関わる分子であり、これを標的とした治療が、予後改善につながる可能性が示された。 前年度までの検討から、CBPCIとPPP3CAの結合を阻害する細胞膜透過性ペプチドは、ヒト膵癌細胞株Capan1を用いた細胞実験で増殖抑制効果がみられることを確認している。Capan1による膵癌同所移植モデルマウスを用いた細胞膜透過性ペプチド治療実験を施行し、in vivoにおいても、コントロール群と比較し細胞膜透過性ペプチド治療群では腫瘍径および腫瘍量の縮小効果が確認された。 治療後に採取した腫瘍の免疫染色による検討から、細胞膜透過性ペプチド治療群ではKi67-indexが低下し細胞増殖が抑制されていたが、Apoptosisは誘導されなかった。また治療群の腫瘍はmTORのリン酸化が抑制され、さらにE-cadherin発現上昇を認めることを見出した。 細胞膜透過性ペプチド治療の副作用として、免疫抑制効果が懸念されたが、マウス末梢血における免疫抑制効果を検討し、IL-2およびIFN-γの発現低下は免疫抑制剤と比較し軽度であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
同所移植モデルを用いた原発巣に対する治療実験は予定通り達成し、浸潤にかかわる機構の一部も解明した。また副作用に関する検討も達成できた。しかし腹膜播種モデルや肝転移モデルにおける治療効果の検討は達成できていない。理由は、腹膜播種も肝転移も転移巣の作成は可能だが、転移個数を安定化(定量化)するモデルが確立されていない点にある。また、T44Aリン酸化抗体の作成には至っておらず、活性化CBPCIの検出や、新たな活性化CBPCI結合タンパクの探索は達成できていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策は、 (1)腹膜播種モデルや肝転移モデルにおける治療効果の検討を施行する。今後、各モデルマウスにおいて、転移個数を安定的に作成されるモデルの確立が課題である。 (2)細胞膜透過性シグナルの11R配列はすべての細胞に取り込まれるため細胞特異性はない。治療ターゲットCBPCI遺伝子が特異的であるため副作用は少ないと考えるが、癌細胞特異的な細胞膜透過性シグナルを用いれば、さらに選択的に細胞に取り込まれるため、副作用の少ない効果的な治療となる。今後の臨床応用に向けて開発を進めたい。
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