研究実績の概要 |
1)EpCAMおよびその関連分子の未分化癌の悪性度への関与の解明 平成26年度までの解析で、未分化癌細胞株ではEpCAM, claudin-7, CD44v3,CD44v6の発現上昇とALDH1活性の増加を認めるが、分化癌細胞株ではこれらの発現が低いことを観察し、臨床組織でも同様の傾向を認め報告した(Okada et al., PLosOne 2014)。平成27年度は下記の実験をin vitroで行った。①EpCAMと細胞増殖、遊走、浸潤との関連の解析:未分化癌細胞株のEpCAM発現をsiRNAを用いて抑制した際の、癌細胞の増殖、遊走、浸潤能の変化を解析し、EpCAMの抑制により、癌細胞の増殖や遊走が低下する傾向を確認した。 ②EpCAMの上皮間葉転換(EMT)との関わりの解析:分化癌細胞株と未分化癌細胞株との間でEMTのマーカーであるZEB1、NカドヘリンやCD44のvariant発現に関与するESRP1の発現に、明らかな差を認めた。 2)PATZ1の甲状腺癌発症への関与の解析 EpCAMの解析を行う過程で、PATZ1の発現が分化癌と未分化癌とで大きくことなることに気づき、EpCAMと並行して解析を開始し、以下の結果を得た。①臨床甲状腺癌の免疫組織染色での解析で、PATZ1はほぼ全ての正常甲状腺濾胞上皮細胞の核に発現を認めたが、分化癌では局在が細胞質に変化し、未分化癌では核、細胞質ともに発現が著明に低下していた。②甲状腺癌細胞株を用いた実験系で、PATZ1が細胞の遊走や浸潤に関与している可能性が認められた。これらの結果から、甲状腺濾胞上皮細胞の癌化および癌の進展と脱分化にPATZ1が強く関与している可能性を推測し、EpCAMとの関連もあわせ研究を進めている。
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