マルチアレイ法を応用した肝細胞癌発症や再発に関わる背景肝因子の同定と応用

2014 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 25461979
• 研究機関: 愛知学院大学
• 研究代表者: 野本 周嗣 愛知学院大学, 歯学部, 教授 (40300967)
• 研究分担者: 杉本 博行 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20437007) ; 神田 光郎 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (00644668)
• 研究期間 (年度): 2013-04-01 – 2016-03-31
• キーワード: マルチアレイ法 / 発現アレイ / SNPアレイ / メチル化アレイ / MicroRNAアレイ

研究実績の概要

肝細胞がんは日本をはじめアジア地域に多いがん腫の一つであり、その発生母地としてウィルス性肝炎、特に日本や欧米では①｢C型慢性肝炎｣が多く認められたが、近年②｢NASHを代表とする脂肪肝炎｣からの発症が増加する傾向にある。
これまでに我々は｢全くの正常肝：Super Normal(SN)｣(転移性肝がん摘出標本)11例と、｢NASH(非アルコール性脂肪肝炎)背景HCCの正常組織：NASH Normal(NN)｣1例、｢HCV陽性肝硬変背景HCCの正常組織：HCV Normal(CN)｣1例のDNAとRNAを抽出し、SNは症例による個体差を消すため11例を混和したうえで、これを基準として、SN:NN,SN:CNを比較しまずは｢発現アレイ｣｢メチル化アレイ｣でそれぞれに異常のある分子の抽出を試みた。
まずはSNとCNの比較でそれぞれのアレイで異常な差を認める分子としてTHOP1遺伝子を抽出した。当科で手術を行った179例の症例にてこの分子の発現検討を行うと低発現群が有意に予後不良であり、THOP1遺伝子発現の低下が独立した予後不良因子であることが判明したためこれを (Ann Surg Oncol. 2014 Jun;21 Suppl 3:S443-50.)に報告し掲載された。また、HCC切除術後の予後不良因子のバイオマーカーとして特許申請を行った。
さらに、発現が特に高かった遺伝子を抽出し、検討を行ったところ、２分子が有意であったため、これらを易再発性マーカーに成り得る分子として、特許出願を行った。(特願2015-030710）

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

この課題を進めていく段階で、THOP1遺伝子、その他２分子について、肝細胞癌HCCの易再発性を示すマーカーとして臨床応用でき得ると考えている。これらの３分子については特許申請を行った。
３分子を抽出できたことは大変、意義のあることである。
これまでは概ね順調に課題は進展している。

今後の研究の推進方策

抽出した３分子については、肝細胞癌HCCの易再発性を示すのではあるが、さらにHCCの易発症性を示すマーカーと成り得る、と考えている。
HCC患者だけでなく、ウィルス性肝炎患者や脂肪肝患者へも応用できると考えている。
これまでは肝組織中の発現を調べたが、さらには血液検体（血清）での蛋白発現をELISAを使って測定し、採血での判定を試みていく。
さらに抽出した３分子の機能解析も進めていく方針である。

研究成果

• [雑誌論文] High expression of Janus kinase 2 in background normal liver tissue of resected hepatocellular carcinoma is associated with worse prognosis (2015)
  • 著者名/発表者名: Fuminori Sonohara, Shuji Nomoto, Yoshikuni Inokawa, Mitsuhiro Hishida, Nao Takano, Mitsuro Kanda, Yoko Nishikawa, Tsutomu Fujii, Masahiko Koike, Hiroyuki Sugimoto, Yasuhiro Kodera
  • 雑誌名: Oncology Reports 巻: 33(2) ページ: 767-773
  • DOI: 10.3892/or.2014.3621
  • 査読あり
• [雑誌論文] Expression Analysis of THOP1 in Background Liver, a Prognostic Predictive Factor in Hepatocellular Carcinoma, Extracted by Multiarray Analysis (2014)
  • 著者名/発表者名: Shuji Nomoto, Mitsuhiro Hishida, Yoshikuni Inokawa, Nao Takano, Mitsuro Kanda, Yoko Nishikawa, Tsutomu Fujii, Masahiko Koike, Hiroyuki Sugimoto, Yasuhiro Kodera
  • 雑誌名: Annals of Surgical Oncology 巻: 21(suppl3) ページ: 443-450
  • DOI: 10.1245/s10434-014-3581-1
  • 査読あり
• [学会発表] 肝細胞がんの背景肝の異常から抽出した予後因子THOP1/JAK2の検討 (2014)
  • 著者名/発表者名: 野本周嗣、菱田光洋、猪川祥邦、神田光郎、杉本博行、藤井 努、小池聖彦、中山吾郎、藤原道隆、小寺泰弘
  • 学会等名: 第52回日本癌治療学会学術集会
  • 発表場所: 横浜
  • 年月日: 2014-08-28 – 2014-08-30
• [学会発表] 正常肝とHCC背景肝の比較でのマルチアレイ法により抽出したJAK2,THOP1遺伝子発現の検討 (2014)
  • 著者名/発表者名: 野本周嗣、菱田光洋、猪川祥邦、高野奈緒、神田光郎、杉本博行、藤井 努、小池聖彦、藤原道隆、小寺泰弘
  • 学会等名: 第69回日本消化器外科学会総会
  • 発表場所: 郡山
  • 年月日: 2014-07-15 – 2014-07-17
• [学会発表] 背景肝のアレイ解析により抽出したTPPP遺伝子発現が肝細胞癌切除術後の予後に与える影響 (2014)
  • 著者名/発表者名: 猪川祥邦，野本周嗣，菱田光洋，高野奈緒，神田光郎，杉本博行，藤井 努，小池聖彦，藤原道隆，小寺泰弘
  • 学会等名: 第69回日本消化器外科学会総会
  • 発表場所: 郡山
  • 年月日: 2014-07-15 – 2014-07-17
• [学会発表] 正常肝とHCC背景肝の比較でのマルチアレイ法により抽出したJAK2遺伝子発現の検討 (2014)
  • 著者名/発表者名: 野本周嗣、菱田光洋、猪川祥邦、神田光郎、杉本博行、藤井 努、小寺泰弘
  • 学会等名: 第50回日本肝臓学会総会
  • 発表場所: 東京
  • 年月日: 2014-05-29 – 2014-05-30
• [学会発表] ZGPAT gene expression in non-tumor hepatocellular carcinoma tissue is a likely biomarker for survival risk (2014)
  • 著者名/発表者名: Mitsuhiro Hishida, Shuji Nomoto, Yoshikuni Inokawa, Nao Takano, Mitsuro Kanda, Naoki Iwata, Chie Tanaka, Daisuke Kobayashi, Yoko Nishikawa, Suguru Yamada, Goro Nakayama, Tsutomu Fujii, Hiroyuki Sugimoto, Masahiko Koike, Michitaka Fujiwara, Yasuhiro Kodera
  • 学会等名: AACR Annual Meeting 2014 (American Association for Cancer Research)
  • 発表場所: San Diego, CA
  • 年月日: 2014-04-05 – 2014-04-09
• [学会発表] Correlation between worse prognosis and higher expression of the JAK2 gene in corresponding non-neoplastic tissue in patients with hepatocellular carcinoma, extracted by multiarray analysis (2014)
  • 著者名/発表者名: Shuji Nomoto, Mitsuhiro Hishida, Yoshikuni Inokawa, Nao Takano, Mitsuro Kanda, Yasuhiro Kodera
  • 学会等名: AACR Annual Meeting 2014 (American Association for Cancer Research)
  • 発表場所: San Diego, CA
  • 年月日: 2014-04-05 – 2014-04-09
• [学会発表] Correlation between worse prognosis and lower expression of the TPPP gene in patients with hepatocellular carcinoma, detected by multiarray analysis (2014)
  • 著者名/発表者名: Yoshikuni Inokawa, Shuji Nomoto, Mitsuhiro Hishida, Nao Takano, Mitsuro Kanda, Michitaka Fujiwara, Masahiko Koike, Hiroyuki Sugimoto, Tsutomu Fujii, Goro Nakayama, Suguru Yamada, Chie Tanaka, Daisuke Kobayashi, Naoki Iwata, Yasuhiro Kodera
  • 学会等名: AACR Annual Meeting 2014 (American Association for Cancer Research)
  • 発表場所: San Diego, CA
  • 年月日: 2014-04-05 – 2014-04-09
• [学会発表] 正常肝とHCC背景肝の比較から抽出したJAK2遺伝子の発現の検討 (2014)
  • 著者名/発表者名: 野本周嗣，菱田光洋，猪川祥邦，高野奈緒，杉本博行，藤井 努，神田光郎，小池聖彦，藤原道隆，小寺泰弘
  • 学会等名: 第114回日本外科学会定期学術集会
  • 発表場所: 京都
  • 年月日: 2014-04-03 – 2014-04-05
• [産業財産権] 肝細胞がんに関する診断のために有用な背景肝因子及びその利用 (2015)
  • 発明者名: 野本周嗣
  • 権利者名: 名古屋大学
  • 産業財産権種類: 特許
  • 産業財産権番号: 2015-030710
  • 出願年月日: 2015-02-27
• [産業財産権] 肝細胞がんに関する診断のために有用な背景肝因子及びその利用 (2015)
  • 発明者名: 野本周嗣
  • 権利者名: 名古屋大学
  • 産業財産権種類: 特許
  • 産業財産権番号: 2015-030710
  • 出願年月日: 2015-02-27
  • 外国