研究課題/領域番号 |
25461980
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鈴木 栄治 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00612897)
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研究分担者 |
佐藤 史顕 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20467426)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 乳癌 / 腫瘍微小環境 / ニューロピリン / トラスツズマブ / 単球 / HER2 |
研究概要 |
1、トラスツズマブ誘導性ADCC活性における単球及びリンパ球NRP1発現機能解析を行った。FACS Ariaを用いて単球及びリンパ球NRP1高発現サブセットと低発現サブセットにソーティングを行いこの細胞を用いてトラスツズマブ誘導性のADCCアッセイを行った。単球及びリンパ球を用いた両アッセイともにNRP1高発現サブセットの群において有意なADCC活性の増加を認めた。2、NRP1高発現単球とNRP1低発現単球の網羅的遺伝子解析を行った。FACSにてソーティングを行った健常人由来のNRP1高発現単球とNRP1低発現単球からRNAを抽出し、網羅的遺伝子解析を行った。NRP1高発現単球においてケモカインレセプターであるCCR3及び単球分化において重要な役割を果たすGATA2がup-regulateされていた。3、NRP1中和抗体によるトラスツズマブ誘導性ADCC活性解析及びサイトカイン分泌解析を行った。腫瘍ターゲットを乳癌細胞株SK-BR3、エフェクターをそれぞれソーティングした単球及びPBMCsとしLDH assay kit (WAKO)を用いてトラスツズマブ誘導性のADCCアッセイにNRP1中和抗体(R&D, AF3870)が与える影響を確認した。NRP1中和抗体によりADCC活性は抑制され単球上のNRP1がADCC活性に機能的に作用していることが確認された。さらにNRP1中和抗体により種々のサイトカイン放出が抑制されていることが確認された。4、超免疫不全マウスであるNOD/Shi-scid, IL-2Rγnull mouse(NOGマウス)を使用し、乳癌細胞株BT474及びSK-BR3にてADCCモデルを確立した。これにより、よりヒト免疫に近い条件でのマウスモデルでADCCを惹起する各薬剤(トラスツズマブ、ペルツズマブ、T-DM1)での実験系を組むことが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は免疫細胞NRP1発現の意義を基礎的、臨床的に解明するのが最終ゴールである。今年度はそのうち主に基礎的背景について重点的に解析を行えた。またvivo実験を行うための条件設定もほぼ確立出来た。まず健常者の免疫細胞をFACSによって解析しCD14+NRP1+、CD14+NRP1-、CD14-NRP+、CD14-NRP-の4サブセットの存在を確認した。この細胞群のうちCD14+NRP1+細胞の機能を解析することが本研究では重要である。CD14+NRP1+細胞は有意に乳癌細胞傷害活性が高くこの細胞をNRP1中和抗体で阻害するとその細胞傷害活性が抑制された。同時にADCC誘導性サイトカイン産生もNRP1中和によって阻害された。このことはNRP1の発現は免疫細胞上で癌細胞傷害活性において重要な機能的役割を有することを示唆する。我々はさらにNRP1発現免疫細胞の遺伝子プロファイルをマイクロアレイを用いて解析した。興味深いことにNRP発現免疫細胞はCCR3と単球分化において重要な役割を果たすGATA2の発現が有意に高いことが確認された。以上免疫細胞NRP1発現の意義の基礎的研究の面では順調に成果をあげることが出来た。これらの結果は2014年4月の米国癌学会で発表した(抄録番号153)。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の基礎的解析の結果を背景に超免疫不全マウスであるNOD/Shi-scid, IL-2Rγnull mouse(NOGマウス)を用いたin vivo実験でのデータの収集を行う。これにより本研究で得られた成果を臨床応用するための基礎的データの一つとなるよう目指す。またNRP1発現免疫細胞の重要性を臨床検体を用いて解析する。具体的にはHER2陽性乳癌患者の術前抗HER2療法前の組織並びに術前治療後の組織をCD14陽性かつNRP陽性またCD56陽性かつNRP陽性細胞を二重免疫染色でその多寡を評価する。この結果と臨床効果との相関について解析する。基礎的データ臨床的データの統合を行い論文化、学会発表を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度必要試薬が過去にすでに保持していたもので賄うことが出来たため新規購入試薬が当初予定していたより少なかった。研究室共通物品への払い出しが当初の予定より少なかった。仮説に対する結果が順調に得られたため予測したものより必要試薬が少なくなった。学会発表のための旅費の払い出しが次年度請求となった。 必要試薬は次年度はほぼすべて新規購入が必要なものであることが判明しており予定通りの試薬費が必要となる。研究室共通物品についても次年度は今年度より多く払い出しが必要な見積もりである。次年度は動物実験の評価が必要となりこのための経費が必要となる。学会発表のための旅費の払い出しが今年度と次年度の二回分が必要になる恐れがある。
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