研究課題/領域番号 |
25461984
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
日吉 幸晴 熊本大学, 医学部附属病院, 特任助教 (30573612)
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研究分担者 |
石本 崇胤 熊本大学, 医学部附属病院, 非常勤診療医師 (00594889)
別府 透 熊本大学, 医学部附属病院, 特任教授 (70301372)
今村 裕 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (70583045)
渡邊 雅之 公益財団法人がん研究会, その他部局等, 食道担当部長 (80254639)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | lincRNA / 消化器癌 |
研究実績の概要 |
平成25年度から26年度は、九州大学第二外科、熊本大学消化器外科の消化器癌(食道癌、胃癌、大腸癌)切除検体(凍結標本)を用いて、正常組織、癌組織中のlincRNA測定を行った。食道癌、胃癌、大腸癌それぞれ10症例の癌組織、正常粘膜からTrizolを用いてtotal RNAを抽出し、逆転写反応を行いcDNAを作成した。過去に癌との関連が報告されているlncRNAの中から、oncogenicなものとしてHOTAIR、Malat1を、tumor suppressorとしてMEG3、GAS5の発現をreal time PCRで解析した。GAPDHをコントロールとし、解析はΔΔCt法で行った。HOTAIRは食道癌、胃癌、大腸癌で正常粘膜よりも癌組織で発現が上昇していた。これは過去の様々な報告と一致する結果である。Matat1、MEG3、GAS5は正常粘膜、癌組織で一定の発現変化はみられなかった。 HOTAIRはすでに食道癌、胃癌、大腸癌で予後との相関が報告されている。また、今回の解析でMEG3は、発現量が非常に少なく、real time PCRでの正確な解析は困難と考えられた。そこで次に、癌におけるMalat1、GAS5の発現と、予後との相関を検討した。食道癌、胃癌、大腸癌それぞれ40症例の癌組織からRNAを追加で抽出し、total 50例でMalat1、GAS5を同様に解析し、発現量を中央値で分けて、高発現群、低発現群とした。2群間で無再発生存、全生存をカプランマイヤー法を用いて比較した。結果は、胃癌のGAS5高発現例ならびに、大腸癌のMalat1高発現例で全生存が不良の傾向があったが、いずれの癌種でもMalat1、GAS5の発現と予後との有意な相関はみられなかった。その他、これらのlncRNAの発現と、臨床病理学的因子との相関も比較したが、有意な相関はみられなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成25年度の研究計画では1)消化器癌切除検体からのtotal RNA抽出、2)lncRNA発現の網羅的解析、3)lncRNAの発現と臨床病理学的因子、予後、治療効果との相関の検討を予定していた。また、その結果をもとにして平成26,27年度は、標的lincRNAの細胞生物学的機能解析、lincRNAの発現制御機構の解明、標的遺伝子の同定を予定していた。 しかし、これまでのところ、消化器癌に特異的に発現し、新たなバイオマーカー、治療標的となりうるようなlincRNAの同定に至っていない。したがって、そこからのlincRNAの機能解析、標的遺伝子の同定もできていない現状である。 平成25年度は九州大学で、平成26年度は熊本大学で研究を行った。九州大学でreal-time PCRによるlincRNAの測定を行い、手技的に安定した結果を得られるようになった。しかし、熊本大学でその結果の再現性を得るために同様の実験を行ったが、実験環境が変わり、手技の安定にやや時間を要したため、研究の進捗に遅れが生じてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度はがん研有明病院で研究を推進する。これまでは消化器癌として食道癌、胃癌、大腸癌におけるlincRNAの解析を行ってきたが、平成27年度は大腸癌に絞って解析を進めていく予定である。がん研有明病院では、大腸癌手術症例数が多く、切除検体はすべて凍結保存されている。また、血清サンプルも利用可能である。そこで、多数例の大腸癌組織だけでなく、大腸癌患者血清中のlincRNA解析を行い、新規バイオマーカー検索を行いたいと考えている。特に、術前化学放射線療法を行った進行直腸癌症例の治療前後の血清サンプルが利用可能であり、化学放射線療法の感受性予測マーカーとなり得るlincRNAを同定したいと考えている。 当初、細胞株を用いたlincRNAの機能解析を予定していたが、現在までの研究達成度を考えると、新たな研究環境で平成27年度中にそこまで研究を進めることは困難と考えられる。少なくとも、大腸癌患者の組織、血清サンプルを用いて、大腸癌の新規バイオマーカーや治療効果予測因子となるlincRNAを同定するところまでは達成したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の異動に係り、実験の着手に遅れがでたため。
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次年度使用額の使用計画 |
現在の遅れを取り戻すべく、研究推進に力を入れる。そのため、研究費は主に実験関連試薬・消耗品購入費に充てたいと考える。
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