研究課題
平成25年度から26年度は、九州大学第二外科、熊本大学消化器外科の消化器癌(食道癌、胃癌、大腸癌)切除検体を用いて、正常組織、癌組織中のlncRNA測定を行った。過去に癌との関連が報告されているlncRNAの中から、oncogenicなものとしてHOTAIR、Malat1を、tumor suppressorとしてMEG3、GAS5の発現をreal time PCRで解析した。HOTAIRは食道癌、胃癌、大腸癌で正常粘膜よりも癌組織で発現が上昇していた。Matat1、MEG3、GAS5は正常粘膜、癌組織で一定の発現変化はみられなかった。HOTAIRはすでに食道癌、胃癌、大腸癌で予後との相関が報告されている。そこで次に、癌におけるMalat1、GAS5の発現と、予後との相関を検討した。結果は、胃癌のGAS5高発現例ならびに、大腸癌のMalat1高発現例で全生存が不良の傾向があったが、いずれの癌種でもMalat1、GAS5の発現と予後との有意な相関はみられなかった。これらのlncRNAの発現と、臨床病理学的因子との相関も比較したが、有意な相関はみられなかった。平成27年度はがん研有明病院で、直腸癌術前化学放射線療法の感受性予測マーカーとしての血清中lncRNAの有用性について検討した。術前化学放射線療法前に採取した血清サンプルからRNAを抽出し、まず、大腸癌患者血清に存在するとされるHOTAIRをreal-time PCRで解析しようと試みた。しかし、発現量が極めて少なく、定量解析は不可能であった。まとめると、平成25年度から27年度にわたって、消化器癌患者の組織中、血清中に存在するlncRNAを解析し、新たなバイオマーカーや治療感受性予測マーカー、治療標的となりうるかどうかを検討してきた。しかしながら、解析したlncRNAのなかでは有望な結果を導き出すことができなかった。
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