研究実績の概要 |
1.症例データデースの構築:2016年3月31日までに、手術を行った症例は128例であり、腫瘍径、年齢、リンパ節転移の有無など臨床病理学的所見などの情報を一元的に管理するデータベースを構築した。 2.癌関連遺伝子の解析:小児甲状腺癌手術症例のうち、研究参加の同意が得られた対象者67例について、BRAF,RASの解析を行った。BRAFの点突然変異は63%で認められ、K, N, H RASには遺伝子変異を認めなかった。BRAFの点突然変異はすべてV600Eであった。これらの結果は、これまでの日本人成人の結果と同等のものであり、チェルノブイリ原発事故後に報告された放射線関連甲状腺癌とは全く異なったプロファイルであった。 また、BRAFについては、V600Eをエピトープとする抗体を用いて免疫組織化学的検討も行った。BRAF蛋白の染色性と変異陽性は同等の結果であった。BRAF染色陽性群、陰性群の平均腫瘍径はそれぞれ14±15㎜、21±14㎜で、有意差はなかった(p=0.08 )。平均年齢はそれぞれ15±2歳、14±3歳であり、有意差は無かった(p=0.23)。リンパ節転移の状況については、染色陽性群における転移陰性例は6例、陽性例は27例、染色陰性群ではそおれぞれ7例、14例であり、リンパ節転移とBRAF染色性については関連性が無かった(p=0.33)。 現在までの検討では、小児甲状腺癌における遺伝子変異は、成人型と同等であることが示唆された。
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