低出力超音波パルス(LIPUS)により腎尿細管細胞再生が促進されるのか評価するため、in vivo実験形式で、マウス虚血性急性腎障害モデルを作製してLIPUS照射群・非照射群で①腎再灌流後の腎組織障害の程度、②腎機能、③腎尿細管細胞の増殖能、④腎尿細管再生増殖因子の発現の4項目を中心に比較検討した。平成27年度までに、LIPUS照射群、非照射群を各々10例以上作製し、LIPUSにより強い腎尿細管再生促進を病理組織学的、血液生化学検査にて組織障害の軽減、特に尿細管周囲の壊死細胞の軽減を認めた。また、腎機能マーカーであるCreatinineやBUNの軽減が認められた。関連サイトカインに関してもLIPUS照射群でEGF、HGF、TNF-α、IL-6、cyclin Dの有意な上昇を確認した。平成28年度は、in vivo実験数をさらに10例増やし検証した。上記と同様の結果を得ることで、LIPUSが作用している細胞を特定するため、in vitroの実験形式で、マウス虚血性急性腎障害モデルから採取した初代培養腎尿細管細胞に対してLIPUS照射群・非照射群で①培養腎尿細管細胞の増殖能、②培養液中の腎尿細管再生増殖因子の含有量、③腎尿細管再生増殖因子の活性程度の3項目を中心に比較検討した。初代培養腎尿細管細胞に対してのLIPUS照射群は非照射群と比べて、BrdUの取り込みの上昇やEGF、HGF、cyclin Dなどのサイトカインの上昇を認め、細胞増殖周期回転の促進の可能性が認めれた。照射時間は10分間の照射でも30分間の照射でも有意差は認められなかったが、照射回数が3回以上と未満では有意に回数の多い群で増殖活性の上昇を認めた。
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