研究課題/領域番号 |
25461992
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
小野田 尚佳 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30295703)
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研究分担者 |
野田 諭 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20382103)
柏木 伸一郎 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80637017)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 甲状腺未分化癌 |
研究実績の概要 |
同一腫瘍組織から分離樹立した紡錘形細胞OCUT-1Fでは敷石状細胞1Cと比較し増殖が早く、遊走能が優る。抗癌剤、放射線に対しては、1Cと比較しOCUT-1Fが強い耐性を示した。間葉上皮転換(Mesenchymal-Epithelial Transformation)を誘導する薬剤の添加により、OCUT-1Fで紡錘形から敷石状への細胞形態の変化が観察された。一方、上皮間葉転換(Epithelial-Mesenchymal Transformation)を誘導するとされるTGF-βの添加によりOCUT-1F ではsnai1 mRNAが強く誘導され、OCUT-1CではCDH1 mRNAの発現が強く抑えられた。 網羅的プロテオーム解析からは、BASP1, Vimentin, heat shock protein1, reticulon 4などの蛋白が1Cと比較しOCUT-1Fで有意に多く認められ、stratifin, keratin 8, annexin A3, aldehydedehydrogenase 1(ALDH1) A3, ubiquitinなどが減弱していた。酸化的ストレス抵抗性や細胞骨格の維持に関与する蛋白の発現量が大きく変動し、PDGFやPPARのup-regulateやPI3Kやp53のdown-regulateも見られた。27年度には、pathway解析などを用いて関連性を検討したうえで、蛋白発現の差異を明らかにする予定。 甲状腺未分化癌の手術標本を用いた免疫組織学的検討から、Stemnessを示す因子の一つであるNestin発現と予後との関連が明らかとなり、論文として発表した。 5種のヒト甲状腺未分化癌細胞をクローニングし基本的性質を確認中。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞株、臨床検体を用いた研究とも結果が集積されてきている。断片的な結果も多いが、総量としては十分な知見があり、想定した通りの結果が大半である。網羅的解析の情報量が極めて多いため、検索範囲を絞り込むことに難渋している。全体としては27年度の研究の総括に向けて、順調な進捗と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
27年度は、これまでの研究結果を総括する。分離樹立した細胞株の性格付けと分子発現の差異が明らかとなった。また、薬剤への曝露による細胞形態の変化が確認されており、形態変化と分子発現の相互の関連性について研究を深め、論文発表する予定である。細胞株のうち最も興味深いものについて樹立と特徴的性格を中心に論文化する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
26年度に実施予定であったエクソーム解析が未実施であったため、約50万円の予算が執行できずに残額となっている。網羅的蛋白解析に時間を要したことが主な原因であるが、年々シークエンス技術が発達し、発注価格も抑えられるようになっており、先進的技術を有効に活用するためエクソーム解析を27年度に実施予定とした。また、海外発表のための旅費を他の経費から捻出可能であったため、10万円の予算が他の目的で使用可能となった。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度にエクソーム解析を行う予定であり、繰り越し予算をこれに充てる。
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