研究課題/領域番号 |
25461996
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
神野 浩光 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (20216261)
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研究分担者 |
砂村 眞琴 東京医科大学, 医学部, 兼任教授 (10201584)
杉本 昌弘 慶應義塾大学, 生命科学研究科, 特任准教授 (30458963)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 唾液 / メタボローム / 乳癌 / 診断 / CE-TOFMS |
研究実績の概要 |
目的:我々は乳癌患者を対象として、低侵襲に採取可能な体液である唾液のメタボローム解析を行うことにより新たな乳癌診断法を開発することを目的とした。対象と方法:当院を受診した乳癌患者90例の唾液を採取し、CE-TOFMS(キャピラリー電気泳動・飛行時間型質量分析装置)を用いて50-1,000m/zのイオン性代謝物の網羅的な測定を行った。540物質の標準同定と定量を行った。対照として20名の健常女性から得られた唾液を用いた。統計解析にはnonparametric Mann-Whitney U test 及びreceiver operating characteristics (ROC)を用いた。結果:浸潤性乳管癌70例、浸潤性小葉癌2例、非浸潤癌14例を含む乳癌症例の年齢中央値は61歳 (range:26-81歳)、平均腫瘍径は2.3cm、臨床的リンパ節転移陰性症例が71例であった。ホルモン陽性症例を77例、HER2陽性症例を19例に認めた。平均のKi-67値は20.4%であった。術前化学療法後の症例を21例に認めた。Mann-Whitney testにて乳癌患者と健常者の間に有意差を認めた代謝物は61物質であったが、false discovery rateにて補正後は50物質となった。乳癌患者における濃度が健常者の3倍以上の物質は34物質、10倍以上の物質は4物質であった。これら4物質の濃度は術前化学療法施行後では低下する傾向がみられた。4物質におけるROC-(受動者動作特性)曲線下の面積は0.850、0.819、0.809、0.765と高値であった。結語:低侵襲かつ低コストにて採取可能である唾液のメタボローム解析により新たな乳癌検診システムの可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
乳癌患者に特異的な唾液中の代謝物質を50個同定している。
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今後の研究の推進方策 |
組織を用いたメタボローム解析 唾液・血液から得られた特徴的な代謝産物が癌組織においても同様に増加ないしは減少しているかを確認する。これら代謝産物の産生過程に注目し、酵素などの代謝産物を増加もしくは減少させる役割を担う蛋白を同定する。
診断マーカーの有用性の評価 唾液メタボローム解析から得られた診断用マーカーの有用性を確認すために、検体情報をブラインドとしてメタボローム解析を行い、提案された診断システムの正診率を評価する。唾液のみならず血液も用いてマーカーの有用性を評価する。正診率が有意差を持って高率であれば、このメタボローム解析の代謝産物に関して特許を申請する。同様の検討を研究グループに属していない医療機関にサンプルの提供を求め、提案された診断用のマーカーの有用性を再評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
効率的な物品調達を行ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度研究費と合わせて、消耗品の購入に充てる。
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