研究課題/領域番号 |
25461998
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
藤田 知之 東京医科大学, 医学部, 講師 (00419392)
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研究分担者 |
藤森 実 東京医科大学, 医学部, 教授 (00262725)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 甲状腺未分化癌 / JAK-STAT経路 / パクリタキセル感受性・耐性 / JAK阻害剤 / 新規治療 / 標的治療 |
研究概要 |
甲状腺未分化癌は悪性度がきわめて高く、長年にわたり治療改善がなく、新たな治療の確立もない。要因のひとつは未分化癌の特性を標的とした薬剤を使用していないことがあげられる。そのため、甲状腺未分化癌治療に有効な新規標的治療薬をバイオマーカーとともに開発に繋げることを目的としている。 タキサン系抗癌剤パクリタキセル感受性甲状腺未分化癌細胞株KTA-3と、パクリタキセル耐性甲状腺未分化癌細胞株TTA-2を用い、発現遺伝子プロファイルの差異をマイクロアレイを応用し解析した結果、JAK-STAT経路の発現がパクリタキセルの感受性・耐性に重要であることを新たに見出し、JAK-STAT 経路の発現低下がバイオマーカーとなっている可能性を示した。 その結果を、リアルタイムRT-PCR 用遺伝子発現アッセイPrimer Arrayを用い、網羅的にシグナル伝達系のmRNA発現を解析し、マイクロアレイによる解析の再現性を確認した。 さらに、JAK阻害剤による甲状腺未分化癌細胞株の細胞増殖抑制効果を検証した。KTA-3, TTA-2に、5種類のJAK阻害剤(Ruxolitinib, ZM 39923 HCl, AT9283, AZD1480, JAK inhibitor I)を、濃度依存性に添加しWST-8アッセイを行った。TTA-2,KTA-3ともJAK阻害剤による細胞増殖抑制効果が見られ、特に、JAK2/3阻害剤のAT9283の細胞増殖抑制効果がもっとも高かった。 また、KTA-3, TTA-2に、パクリタキセル存在下および非存在下でJAK阻害剤を、濃度依存性に添加しWST-8アッセイを行った。パクリタキセル非存在下ではJAK阻害剤の効果は両細胞株とも認めなかった。KTA-3のIC50濃度のパクリタキセルを添加した場合、JAK阻害剤によりKTA-3では変化がなかったが、耐性株TTA-2の細胞増殖阻害作用が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究計画の通り、リアルタイムRT-PCR法を用い網羅的にシグナル伝達系のmRNA発現を解析し、マイクロアレイによる解析の再現性を確認した。また、パクリタキセル感受性甲状腺未分化癌細胞株でJAK-STAT 経路の発現低下があり、パクリタキセル耐性株でJAK-STAT経路が活性化したままであることを、ウェスタンブロット法により確認する予定であった。しかし、甲状腺未分化癌細胞株に対する強い細胞増殖阻害活性を有するJAK阻害剤の選定、および甲状腺未分化癌細胞株パネルを用いて、使用する細胞株の選定をしたのちに、タンパク発現解析を行うことにより、より早く新規標的治療薬の開発という目的に近づくと考えた。そのため、平成25年度は、主にJAK阻害剤の選定を行った。平成25年度の目的の達成度は、70%程度と考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は①JAK2阻害剤およびJAK3阻害剤を用い、TTA-2とKTA-3に対する細胞増殖阻害解析を行い、開発解析に最適なJAK阻害剤の選定を引き続き行う。②すでに入手している甲状腺未分化癌細胞株パネルを用いて、①で選定したJAK阻害剤の細胞増殖阻害活性を解析する。③耐性株TTA-2はIL-6を産生している(Yoshida A, et al. J Surg Oncol. 1994:55:104-7)ことが報告されているため、サイトカインの変化をELISAを用いて解析し、JAK阻害剤の効果のバイオマーカーとなりうるか検証する。 さらに、in vitroでのタンパク発現解析を得て、in vivoでxenograftモデルでJAK阻害剤の効果を検証し、POCが得られれば、前臨床試験、JAK-STAT阻害剤による第1相臨床試験への体制を構築していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品購入等で予算と同額に消費できなかったため。 細胞培養液など消耗品で使用する予定である。
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