研究実績の概要 |
甲状腺未分化癌は悪性度がきわめて高く、長年にわたり治療改善がなく、新たな治療の確立もない。要因のひとつは未分化癌の特性を標的とした薬剤を使用していないことがあげられる。そのため、甲状腺未分化癌治療に有効な新規標的治療薬をバイオマーカーとともに開発に繋げることを目的としている。タキサン系抗癌剤パクリタキセル感受性甲状腺未分化癌細胞株KTA-3と、パクリタキセル耐性甲状腺未分化癌細胞株TTA-2を用い、発現遺伝子プロファイルの差異をマイクロアレイを応用し解析した結果、JAK-STAT経路の発現がパクリタキセルの感受性・耐性に重要であることを新たに見出し、JAK-STAT 経路の発現低下がバイオマーカーとなっている可能性を示した。その結果を、リアルタイムRT-PCR 用遺伝子発現アッセイPrimer Array®を用い、網羅的にシグナル伝達系のmRNA発現を解析し、マイクロアレイによる解析の再現性を確認した。 さらに、JAK阻害剤による甲状腺未分化癌細胞株の細胞増殖抑制効果を検証した。KTA-3, TTA-2に、多種類のJAK阻害剤を、濃度依存性に添加しWST-8アッセイを行った。パクリタキセル耐性TTA-2にもJAK阻害剤による細胞増殖抑制効果が見られ、特に、JAK2/3阻害剤のAT9283の細胞増殖抑制効果がもっとも高かった。 また、KTA-3, TTA-2に、パクリタキセルおよびAT9283を、添加しELISA法によりIL-6を測定した。細胞増殖阻害作用を認めたKTA-3に対するパクリタキセルおよびAT9283添加とTTA-2に対するAT9283添加ではIL-6がコントロールに比べ低下するのに対し、細胞増殖阻害を認めないTTA-2に対するパクリタキセル添加ではIL-6の低下を認めなかった。 以上について、国際学会(第106回アメリカ癌学会)で発表し、論文投稿中である。
|