研究課題/領域番号 |
25462003
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
伊藤 裕子 大阪医科大学, 医学部, 准教授 (40148432)
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研究分担者 |
柴田 雅朗 大阪保健医療大学, 保健医療学部, 教授 (10319543)
大槻 勝紀 大阪医科大学, 医学部, 教授 (50140166)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | microvesicles / exosomes / matureVEGF-C / precursorVEGF-C / lymphangiogenesis / metastasis |
研究概要 |
近年、種々の細胞からmicrovesicles (MVs)が放出されることが知られている。MVsには受容体タンパク、タンパク分解酵素、miRNA、mRNAなどが含まれる。ドナー細胞からMVsが標的細胞へ伝播され標的細胞に様々な機能変化をもたらす。われわれは、高い転移性をもつマウス乳癌細胞株(BJMC3879)ではmature VEGF-Cの発現が強く、BJMC3879と同系であるが低い転移性の乳癌細胞株(BJMC338)ではmature VEGF-Cの発現が低いことを報告した。これらの乳癌細胞株を移植した乳癌で、BJMC3879乳癌の周囲にはリンパ管が多数形成されリンパ行性転移の要因となった。今回、培養上清よりMVsをexosomes(直径50-100nm)とshedding vesicles(直径100nmより大)に超遠心分離後、フィルターにて精製した。NANOsightにてサイズ測定を行うと両MVsは平均して約150nmで有意差はなかった。また、得られたタンパクにおけるVEGF-C の発現をWestern blot で検討すると両者のMVsにはmature VEGF-Cの発現がほとんど認められなかったが、precursor VEGF-Cの発現は両細胞株において認められ、特にexosomes分画で強かった。MVsの伝播実験において、VEGFR3(VEGF-C受容体)を発現している内皮細胞は両細胞株のexosomesを取り込むことが確認された。そこで、取り込まれたprecursor VEGF-C が内皮細胞で機能するか検討した。マトリゲルを用いたTube formation assay、増殖率assayについて両MVsを添加すると無添加のコントロールよりも有意に増強したが、両MVsについては有意差が認められなかった。すなわち、MVsに含まれるprecursor VEGF-Cについてはリンパ管形成能に差がないと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Microvesiclesのサイズ計測が可能な機器がないために、2種類のMicrovesiclesを比較するのに時間がかかったが、おおむね計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
高転移性株と低転移性株のMVsで比較しているが、MVsに含まれるprecursorVEGF-Cはlymphangiogenesisについて差がないことがわかった。差が生まれるには1)MVsの分泌環境 2)MVsを受け取る細胞に差があることが考えられる。 1) について。腫瘍内の環境は低酸素であることが知られているので、低酸素下で培養したときに分泌されるMVsについて検討する。 2) ある種の癌細胞はVEGF-Cの受容体VEGFR3を発現していることが知られている。すなわち、オートクライン的に乳癌細胞自体に作用すると考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では、電子顕微鏡的な解析を多く使用している。透過型電顕の試料作製にはダイヤモンドナイフが不可欠である。使用していたダイヤモンドナイフは刃がダメージを受けており、再研磨が必要となった。その期間が2か月近くかかり、決算時期に間に合わなかったため。 ダイヤモンドナイフについては、再研磨に出してから使用する。実験は上記の今後の方策の通りに進める。1)低酸素下で乳癌細胞を培養し、MVsを回収して、両MVsについて昨年度と同様に比較検討する。これに必要な器具、酸素ボンベ、抗体を購入する。2)通常の培養条件下と低酸素下での培養でVEGFR3の発現を比較する。乳癌細胞にMVsを伝播させる。これに必要な器具、酸素ボンベ、抗体を購入する。
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