研究課題
早期乳癌において骨髄微小転移は予後不良因子の一つである。骨髄微小転移巣ではがん幹細胞としての性質を示すことが示唆されており、また造血幹細胞あるいはがん幹細胞の維持においてはケモカインSDF-1/CXCR4が重要な役割を果たしていることが知られている。今回我々は、乳癌骨転移におけるSDF-1/CXCR4シグナルの役割を明らかにするとともに、これらを治療標的とした新規治療法における研究基盤の確立を目指し検討を進めている。当院において乳癌局所切除および骨転移巣切除がともに行われた14症例を対象に、原発巣および骨転移巣に対しER、PgR、HER2、FOXA1、GATA3、ALDH1、SDF-1、Nucleosteminに関する免疫組織染色を実施した。各蛋白の陽性率は、ER;原発巣100%(14/14)、骨71.4%(10/14)、PgR;原発巣64.3%(9/14)、骨35.7%(5/14)、HER2;原発巣7.1%(1/14)、骨7.1%(1/14)、p53;原発巣71.4%(10/14)、骨64.3%(9/14)、FOXA1;原発巣100%(14/14)、骨78.6%(11/14)、GATA3;原発巣64.3%(9/14)、骨26.6%(4/14)、ALDH1;原発巣0%(0/14)、骨14.3%(2/14)、SDF-1;原発巣85.7%(12/14)、骨78.6%(11/14)、Nucleostemin;原発巣28.6%(4/14)、骨14.3%(2/14)であった。対象となった症例すべてがホルモン受容体陽性であったことは大きな特徴であり、また転移巣においてホルモン受容体陰転化が約30%に認められたことは既報と一致している。当初の予想に反し、転移巣におけるがん幹細胞マーカー(ALDH1、SDF-1、Nucleostemin)の明らかな陽転化は認められなかった。現在、原発巣と転移巣のbiologicalな変化を見出すべく、14症例28検体のホルマリン固定標本からDNAを抽出し、各種遺伝子変異解析(PIK3CA、KRAS、NRAS、BRAF)を行っているところである。
3: やや遅れている
免疫組織染色による検討が終了した段階で、ホルマリン固定標本からのRNA抽出を試みたが、検討したいずれの標本からもうまく抽出できなかった。原因としては、当時酸性ホルマリンによる固定が長時間(1週間程度)行われていたこと、また骨転移巣に関しては脱灰処理が加わっていること、が考えられた。現在DNAの抽出を試みているところであるが、やはり抽出に手間取っているところである。
ヒト検体を用いたタンパク、RNAについての検討は終了した。現在DNA抽出を試みており、この結果に関しては近日中に最終判断を行う予定である。この検討が終了した後、細胞株・動物実験などによる研究を行う予定であり、SDF-1/CXCR4シグナルを阻害した際の骨転移の変化などについて検討を進めていきたいと考えている。
本年度はRNA・DNAの抽出解析を進めるとともに、細胞株・動物実験を開始する予定であったが、ヒト検体の保存状態が思わしくなく、RNA抽出に時間がかかる結果となった。またRNA抽出後に予定していたアレイを用いた検討は、良質なRNAが抽出できなかった事から中止となっている。現在DNAの抽出も試みているところであるが、こちらも変異解析に使用可能なレベルのものが得られるか評価を進めているところである。これらの検討を進めている段階であることから細胞株・動物実験の開始が遅れている。
ヒト検体からDNA抽出を行い、乳癌において重要と考えれれている遺伝子変異に関して検討をすすめていく。また細胞株・動物実験も開始する予定であり、予算は主にこれらに充当する計画である。
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