研究課題
我々はこれまでの実験で,SDラットに高脂肪・高フルクトース食(FFD)を与えることにより,食事誘発性肥満/NASHモデルを作成することに成功した.このモデルを用いて,減量手術の代謝改善効果発現の主要手術と考えられる十二指腸空腸バイパス術(DJB)を施行し,NASHの改善効果およびその機序を検討した.【結果】NASHモデルラットにDJBを施行すると,体重増加が抑制されインスリン抵抗性が改善した.NAFLDの活動性の指標となる病理組織スコア,NAFLD activity scoreは有意に低値であった.DJB群では血漿中の胆汁酸が高値であったほか,胆汁酸の核内受容体であるfarnesoid X receptor (FXR) とその下流の転写因子small heterodimer partner (SHP) のmRNA発現が肝において高値であった.FXRは様々な代謝関連酵素の発現を調節することが知られており,SREBPもその下流に位置するが,本研究では有意差を認めなかったものの,SREBP 1cの発現の低下が示唆された.さらにFXRシグナルは肝における抗炎症作用を有することが報告されており,DJB群においてTNF-αやNF-κBといった炎症性サイトカインおよび転写因子の発現が低値であった.以上より同モデルを用いた実験においてDJBのNASH改善効果が示され,その機序として胆汁酸上昇に伴うSREBPを含むさまざまな代謝酵素発現調節機構の関与が示唆され,またその抗炎症作用が重要であると考えられた.さらにDJB術後の血中胆汁酸上昇に関して,腸管からの再吸収の増加がその機序である可能性が示唆された.
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
Surgery
巻: 159 ページ: 1360-1371
http://dx.doi.org/10.1016/j.surg.2015.11.027
肥満研究
巻: 21 ページ: 27-35