研究課題
基盤研究(C)
仮入力本研究の目的は、個々の胃がん患者に対する免疫原性の高い固有抗原を用いた強力な個別化がん免疫治療を開発することである。そのために、胃癌の組織からDNAとRNAを抽出し、次世代シーケンスとMHC class I binding prediction法を用いて、胃がん患者から免疫原性の強い固有抗原の同定を行う。がん部と非がん部(コントロール)からエクソームシーケンスとRNA シーケンスにより、がん特異的なミスセンス変異を同定し、この変異により新しくつくられる変異ペプチドのアフィニティをImmune Epitope Database and Analysis Resourceを用いて計算し候補となる固有抗原を選出する。ヒト胃癌組織検体を取り扱うに先立ち、東京大学医学部遺伝子解析研究倫理審査委員会において、「個々のがんの遺伝子変異に基づく固有抗原の同定と腫瘍内微小環境の解析に基づく免疫制御法を組み合わせた個別化がんワクチン治療の開発」の承認を得て(G3545)また墨東病院において倫理委員会での承認(受付番号39)を得た。今後患者の同意を得て、手術時に摘出した腫瘍から組織を採取し研究に用いる体制を整えた。ヒト胃癌検体の解析に先立ち、p53遺伝子欠損マウスをニトロソウレアで処理して化学発癌を誘発し樹立したマウスの胃癌細胞株を用いて解析システムの構築を行った。4種類の胃癌細胞株(5x10*6個)をC57BL6マウスの皮下に接種したところ、2つの細胞株では腫瘍が拒絶され、残りの2つの細胞株はマウスの皮下で腫瘍を形成した。免疫原性の強い細胞株2種と弱い細胞2種を用いて研究を行うことで、固有抗原に対する免疫応答を遺伝子レベルで比較すること可能である。4種類の胃癌細胞株とC57BL6マウスの腺胃(正常組織)から、DNAを抽出しエクソームシーケンスを行った。がん細胞と正常組織の遺伝子を比較して、解析する予定である。
2: おおむね順調に進展している
仮入力研究計画書では、本年度は、①サンプルの収集(和田)全エクソームシーケンス、②全RNAシーケンス(垣見・松下)③MHC class I epitope prediction法 (和田)を実施する予定であった。まず、①に関しては、東大病院および都立墨東病院で胃癌患者の手術で摘出された組織から、がん部と非がん部、および末梢血リンパ球を採取して、エクソームシーケンスとRNA シーケンスを実施するために、各施設の倫理委員会に実施計画を申請し承認を受けることができた。本年度は、胃癌患者の組織を採取し保存する体制が構築できた。今後4例の胃癌患者の検体を解析し、ミスセンス変異を検出し、固有抗原の候補を選出する。②に関しては、ヒトの検体を採取し集積している間に、マウスの胃癌細胞株を用いた本研究のシステムの検証実験を行った。ニトロソウレア化学発癌で樹立した4種類の胃癌細胞株とC57BL6マウスの正常腺胃からDNAとRNAを抽出し、全エクソームシーケンスを実施した。癌細胞株と正常を比較し、個々の腫瘍において、ミスセンス変異を同定して、固有抗原の候補を解析する準備が整った。ヒト胃癌検体も、同様に解析可能である。③MHC class I epitope prediction法に関しては、次世代シーケンサーで得られたミスセンス変異遺伝子/変異ペプチドの情報から、Immune Epitope Database and Analysis Resource(IEDB)を用いて、MHCクラスI分子への結合アフィニティを計算し、この変異により新しくつくられる変異ペプチドの免疫原性を予測するシステムを構築した。以上のごとく、本研究はおおむね順調に進んでいる。
仮入力平成26年度以降の計画は、①固有抗原の同定と、②固有抗原を用いた個別化がん免疫治療のデザイン、である。我々は、マウスの胃癌細胞株を用いた動物モデルでこの概念を証明し(Proof of Concept)、同時にヒト胃癌組織を用いて、次世代シーケンサーを用いた情報から、①②を実施する予定である。C57BL6マウスで拒絶される2種類の胃癌細胞株をマウスに接種し、その拒絶を確認した後、脾細胞を刺激して腫瘍特異的な細胞傷害性T細胞(CTL)を樹立する。そのCTLが、胃癌細胞株のDNA/RNAを次世代シーケンサーを用いて解析し、MHC class I binding prediction法で予測した固有抗原を認識するかどうかを検討する。また、C57BL6マウスで腫瘍が生着する胃癌細胞モデルでは、予測した固有抗原を用いて予め免疫したマウスに、胃癌細胞を接種して、腫瘍が拒絶されるかどうかを検討する。これにより、固有抗原にたいする免疫応答が実際に抗腫瘍効果を担うかを検討可能である。また、その結果を用いて、実際に免疫反応を誘導し、抗腫瘍効果を発揮したペプチドの情報を還元し、次世代シーケンサーとMHC class I binding prediction法を用いて固有抗原を予測するためのアルゴリズムを検証し改善する。実際に患者の手術検体を用いて次世代シーケンサーを用いて全エクソームシーケンスとRNAシーケンスを行なうことができれば、各組織のがん部と非がん部(あるいはPBMC)を比較して、SNIPと遺伝子変異を選別し、ミスセンス変異を同定し、さらに固有抗原を予測することが可能なシステムが構築できており、マウスのモデルからヒトの検体の解析と検証に移行可能である。
効率的に使用した結果、物品費は当初の予定ほど使用しなかった。次年度に使用する消耗品等で支出する予定である。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
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http://immunoth.umin.jp/result/index_03.html