研究課題
胃癌癌性腹膜炎における腹腔内マクロファージ (MΦ)およびMΦが産生すると考えられているα1酸性糖蛋白 (AGP)の機能について解析した。胃癌癌性腹膜炎を有する患者と、有しない患者(control)の腹腔内MΦを採取し検討を行ったところ癌性腹膜炎患者の腹腔内にはcontrolと比較して多量のMΦが集積しており、それらの表面マーカーをフローサイトメトリーで調べたところ、そのほとんどがM2MΦであることが分かった。さらにRT-PCRの解析では癌性腹膜炎患者のMΦでIL-10、VEGF-A、VEGF-C、MMP-1、amphiregulinの産生が増加していた。in vitroの検討ではM2MΦと胃癌細胞株との共培養により有意な増殖能の増加を認めた。さらに胃癌細胞との共培養によりamphiregulinの産生上昇を認めた。in vivoにおいて、マウス皮下にMKN45とM2MΦの共投与を行ったところ、MKN45単独投与と比較して有意に腫瘍の増大を認めた。また、癌性腹水中のAGP濃度は高値を示し、一般臨床で用いられるパクリタキセル (PTX)の全身投与によって腹水中に移行するPTXと結合することによって抗腫瘍効果が減弱すると推察された。in vitro において、胃癌細胞株に対するPTXの抗腫瘍効果はAGP添加によって濃度依存性に抑制され、このPTXとAGPの結合はエリスロマイシン (EM)と競合し、EM濃度依存性にAGPによって阻害されていたPTX活性は再活性化した。さらに、マウス腹膜播種モデルにおいて、PTX単独投与群に比し、EM併用群で有意に腫瘍重量が低値だった。以上の結果より、胃癌癌性腹膜炎の病態ではM2MΦが腫瘍の進展に関与するため、MΦを標的とした治療法の開発が望まれる。また、AGPがPTXの抗腫瘍効果を減弱させるため、EMの併用で治療効果の向上が期待できる。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件)
Gastric Cancer
巻: Epub ahead of print ページ: 1-14
10.1007/s10120-015-0579-8
Clinical and experimental medicine
巻: Epub ahead of print ページ: 1-8
10.1007/s10238-015-0387-9