研究課題/領域番号 |
25462024
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
佐伯 浩司 九州大学, 大学病院, 講師 (80325448)
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研究分担者 |
森田 勝 独立行政法人国立病院機構(九州がんセンター臨床研究センター), その他部局等, その他 (30294937)
北尾 洋之 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30368617)
沖 英次 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70380392)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 染色体不安定性 / PAK |
研究実績の概要 |
【背景】プロテインキナーゼには、癌の分化や増殖に関連しているものがある。p21-activated kinases (PAKs)はセリン/トレオニンキナーゼであり、グループⅠ(PAK1、PAK2、PAK3)とグループⅡ(PAK4、PAK5、PAK6)の2つのサブグループに分類されている。近年、PAKの過剰発現および遺伝子変異による活性化が癌の発育に関与している、との報告がある。【目的】消化管癌(食道癌、胃癌、大腸癌)におけるPAK1およびPAK4の遺伝子異常を解析し、癌の発育・進展における意義について明らかにする。【対象と方法】術前無治療で切除を行った食道癌13例、胃癌8例、大腸癌22例を対象に、それぞれの癌部からDNAを抽出しSNP-CGH解析を行った。PAK1とPAK4遺伝子の増幅、欠失、copy-neutral LOH(CNLOH)、その他のコピー数異常(CNA)を解析した。p53変異はダイレクトシークエンス法にて解析し、SNP-CGHのデータをもとに染色体不安定性をゲノム全体に対するコピー数異常の部位の割合(% defect)で評価した。【結果】食道癌においてはPAK1に8例(CNA7例、欠失1例)、PAK4に9例(増幅3例、欠失2例、CNLOH1例、CNA3例)、胃癌においてはPAK1に3例(増幅2例、CNA1例)、PAK4に2例(増幅1例、CNA1例)、大腸癌においてはPAK1に1例(欠失)、PAK4に3例(増幅2例、CNLOH1例)遺伝子異常を認めた。特に食道癌においては、PAK1または4に遺伝子異常を認めた症例は13例中11例(85%)であり、その全例で% defectが高く、p53遺伝子変異を10例に認めた。【まとめ】消化管癌においてPAKの遺伝子異常が、癌の発育・進展に関与している可能性がある。特に食道癌においては、染色体不安定性とp53遺伝子変異がPAK遺伝子異常と関連していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
消化管癌においてPAKの遺伝子異常が、癌の発育・進展に関与している可能性が示された。特に食道癌においては、染色体不安定性とp53遺伝子変異がPAK遺伝子異常と関連していることが明らかとなった。この結果は、染色体ダイナミクス解析に基づいた、食道癌研究における新たな知見である。
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今後の研究の推進方策 |
胃癌、大腸癌など他の癌種においても同様の検討を行う。また、データベースを基にさまざまな臨床病理学的因子と対比し、さらに化学療法や放射線療法の感受性を実際の症例の治療経過をもとに解析する。それらの結果を将来の治療戦略構築へと応用していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたLOHの実験が該当年度では終わらなかった為。
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次年度使用額の使用計画 |
当初予定していたLOHの実験を次年度行う為に必要な試薬を次年度繰越額235,000円で購入する。
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