研究課題
現在では、染色体分配機構の破綻が染色体不安定性を通じて細胞の癌化に関わるというモデルは、多くの研究結果から強く支持されている。そして、染色体不安定性の基礎生物学から得られた知見をいかにして癌治療へ応用していくかが、現在の癌における染色体不安定性研究の大きな課題となっている。我々は、紡錘糸の構成成分である微小管の結合タンパク質として知られるEB2が細胞分裂期において特異的に微小管上から消失すること、Aurora BおよびCDK1と呼ばれるリン酸化酵素によってリン酸化修飾されることを見出した。さらに、EB2はリン酸化されると微小管への結合強度が低下することがわかり、EB2が細胞分裂期において特異的にリン酸化されることで、紡錘糸との結合性を低下させることが重要である可能性が示された。そこで、EB2が細胞分裂期において特異的にリン酸化されることの重要性を明らかにするため、EB2のリン酸化部位を決定した後、非リン酸化型EB2をもつ細胞を作製して観察したところ、非リン酸化型EB2は細胞分裂期において微小管に強く結合することで微小管の過剰な安定化を促し、細胞分裂期の進行遅延を誘導した。さらに、非リン酸化型EB2をもつ正常細胞を一定期間培養したところ不均等な染色体分配が誘導され、染色体数が維持できずに異数性を示す細胞が観察された。以上の研究結果より、微小管結合タンパク質のEB2が細胞分裂期においてリン酸化修飾されて紡錘糸への結合性を負に制御されることが、正常な細胞分裂期の進行および染色体数の維持を保証するのに重要であることが明らかとなった(Iimori et al. Nat Commun 2016)。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件)
Nature Communications
巻: [Epub ahead of print] ページ: 未
10.1038/ ncomms11117.
Annals of Surgery
Surgery Today
巻: 46 ページ: 261-7
Cancer Research
巻: 76 ページ: 347-57
10.1158/0008-5472.CAN-15-1563
Journal of Gastroenterology
巻: 50 ページ: 406-13