研究課題/領域番号 |
25462025
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
北島 吉彦 佐賀大学, 医学部, 客員研究員 (30234256)
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研究分担者 |
中村 淳 佐賀大学, 医学部, 助教 (60404175)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Warburg効果 / HIF-1 / 低酸素刺激 / アポトーシス / 活性酸素 / グルコース / インスリン |
研究概要 |
(平成25年度の研究計画に対する実績) HIF-1aノックダウン胃癌細胞株58As9KDを用いて、グルコース+インスリン(GI)添加が低酸素環境下における58As9KDのアポトーシス誘導を増強するかについて、in vitroおよびin vivo(ヌードマウスXenograft)にて解析・検討した。 (結果)in vitro研究:胃癌細胞株58As9KD, コントロール株58As9SCを常酸素(20%O2)および低酸素(1%O2)下で培養後、グルコース(G)単独、インスリン(I)単独さらにG+Iを添加し、経時的(12Hr, 24Hr, 48Hr)にFACSにて細胞内ROS測定した。その結果、58As9KDのみに経時的ROS上昇がみられ、死細胞数増加さらにはウエスタンブロットにてカスパーゼ3・チトクロームC上昇を認め、特に、GI添加による低酸素環境下での58As9KDにおける強力なアポトーシス誘導が示された。また、このROS産生→アポトーシス誘導は抗酸化剤NAC添加により阻止された。さらにGIではin vitro glucose取り込みが最大値を示し、インスリン投与においてグルコーストランスポーターファミリーであるGLUT2の細胞膜上での発現誘導が見られた。また、ミトコンドリアuncouplerであるCCCPを添加するとGIによるROS上昇は抑制された。これらの結果は、HIF-1発現欠失+GIが低酸素環境下の胃癌細胞に致死的ROS産生を促しアポトーシスを誘導することが示唆された。 in vivo研究:58As9KD, 58As9SCをヌードマウス皮下に摂取し、7日目に皮下腫瘍を形成させ、その後腹腔内にグルコース(G)単独、インスリン(I)単独さらにG+Iを腹腔内注入(1回/日X14日)した。経時的に腫瘍径を計測し、14日目には腫瘍を切除し腫瘍内アポトーシスをカスパーゼ免疫染色にて評価した。その結果58As9KD+GIでは、他に比較し著明な抗腫瘍効果およびアポトーシス誘導が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一連のin vitro研究により、HIF-1発現抑制+GIが、低酸素環境下において胃癌細胞58As9のWarburg効果を阻害し、かつ細胞内グルコース取り込みを上昇した結果、ミトコンドリア電子伝達系におけるROS産生を上昇させ、アポトーシスを誘導させる新機序を証明することができた。in vivoにおいてもHIF-1発現抑制+GIが、腫瘍内低酸素環境下にある58As9KD皮下腫瘍においてHIF-1発現誘導が抑制された状況下で、GI投与により腫瘍内ROS産生増加を惹起した結果アポトーシスが最大限に誘導されたことを証明した。
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今後の研究の推進方策 |
HIF-1α阻害剤によるHIF-1α発現阻害効果とHIF-1α阻害剤+GI添加によるapoptosis解析 ・2種のHIF-1α阻害剤評価法:Berberine、2-methoxyestradiolをsigma社より購入後、胃癌細胞株58As9の培養液に添加する。低酸素下でのHIF-1α発現が濃度依存的に阻害されることをwestern blotにて確認する。特異的HIF-1α発現阻害効果は標的遺伝子発現抑制により評価する。 ・Berberin + GI療法、2-methoxyestradiol +GI療法に関するin vitro実験:平成25年度に行った58As9KD細胞を用いたGI添加効果で設定された効果的GI濃度にて、58As9細胞を用いてBerberin + GI、2-methoxyestradiol +GIによる低酸素apoptosis誘導効果を平成25年度に準じて解析・検証する。
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