研究実績の概要 |
研究代表者はヌードマウス同所性移植モデルを用いて、スキルス胃癌腹膜播種形成において低酸素誘導因子(HIF-1α)が必須であり、さらに形成機序が従来言われてきた腹腔内直接散布ではなく、血管・リンパ管を介した遠隔転移である可能性を報告した。本研究はこの機序解明をさらに推し進めるべく、低酸素誘導遺伝子マイクロアレイ解析を行い、スキルス胃癌細胞株58As9, 44As3株に特異的に低酸素誘導発現されるANGPTL4, LOXL2遺伝子を抽出した。その後、ANGPTL4に焦点を絞りsiRNA plasmidを構築し58As9, 44As3株にtransfection後、薬剤選択にてANGPTL4がノックダウンされたstable transfectantsを作成した(58As9-KD4, 44As3-KD3)。これらのノックダウン株を用いて細胞増殖能、アノイキス、造腫瘍性につき解析したところ、それぞれのKD株は低酸素環境下においてcell cycleがG1 arrest、anoikis感受性、造腫瘍性の消失を示した。さらに驚くべきことにKD株ではTGF-βシグナルが活性化を示すsmad2/3のリン酸化認められた。これらの結果は、スキルス胃癌ではTGF-βの腫瘍抑制効果をANGPTL4が遮断していることが示唆された。おそらくスキルス胃癌ではANGPTL4発現を介してアノイキス耐性を獲得し、脈管内転移を可能とし、腹膜播種形成を促進すると推測された。現在、それぞれのKD株をヌードマウス胃壁に同所性移植し腹膜播種形成能を解析中である。研究代表者は、3年間の研究を通して低酸素環境→HIF-1α→ANGPTL4シグナルによる新たな腹膜播種形成機序を明らかにした。現在、論文投稿に向け準備を進めている。
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