研究課題/領域番号 |
25462027
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
岩槻 政晃 熊本大学, 医学部附属病院, 非常勤診療医師 (50452777)
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研究分担者 |
石本 崇胤 熊本大学, 医学部附属病院, 非常勤診療医師 (00594889)
渡邊 雅之 公益財団法人がん研究会, その他部局等, 食道担当部長 (80254639)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 胃癌 / Trastuzumab耐性 / microRNA / FBXW7 |
研究実績の概要 |
前年度にmiR-21-PTEN pathwayが胃癌Trastuzumab耐性にアポトーシスを介して関与していることが示され、本研究の妥当性を証明した。また、Trastuzumab耐性株の作成に成功し、Trastuzumab耐性に関与する新たなmicroRNAを検索した。そこで、本研究で着目するFBXW7遺伝子をregulateするmicroRNAをmicroRNA arrayの結果から、in silicoで候補microRNAとしてmiR-223を同定した。まずFBXW7のsiRNAによる発現抑制行い、FBXW7発現低下でTrastuzumab感受性が低下することを確認し、FBXW7がTrastuzumab耐性に関わることを明らかにした。次いで、miR-223がFBXW7特異的に制御しうるかをluciferase assayを用いてdirect bindingすることを確認した。そこで、同定したmiR-223をHER2陽性株化細胞へ強制発現すると、FBXW7は低下し、Trastuzumab感受性が低下する。一方で、miR-223を発現抑制を行うと、FBXW7の発現は上昇し、Trastuzumab感受性が増加した。次いで、耐性の分子生物学的メカニズムの明らかにするために、FBXW7の標的蛋白であるMCL1に着目した。miR-223を強制発現すると、FBXW7は低下し、標的蛋白であるMCL1が上昇し、Trastuzumab感受性が低下した。その際、アポトーシス関連蛋白の発現を確認すると、MCL1上昇により抗アポトーシス作用により、感受性が低下することを明らかにした。 現在は、耐性株を用いて、同定されたmicroRNAが存在する染色体のcopy numberを確認し、genomeレベルでの発現を確認している。cDNA array, CGH arrayを行うことで、耐性獲得で誘導されるゲノムレベルのダイナミックな変化を解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
In vitroの研究は上記のように、昨年度の結果から進捗が期待できる。しかし、前年度と同様に問題点は、Trastuzumab著効例と耐性例の臨床検体が得られにくいことである(現時点で、数例程度)。HER2陽性胃癌が15%前後であり、今後も多くの検体は採取できないことが予想される。関連病院への検体採取依頼を行うことで積極的に検体集積をすすめている。
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今後の研究の推進方策 |
Trastuzumab耐性株から得られたmicroRNA microarrayの結果から、ゲノムレベルでのダイナミックな変化が生じていることを予想している。そこで、microarrayを用いた網羅的な解析を進めることにより、Trastuzumab耐性に関わる新たなバイオマーカーの検索を試みたい。 また、今回はTrastuzumab耐性に着目したが、理論的にはその他のcytotoxic agentsの耐性にも関わる可能性はある。現在、多くの化学療法は多剤併用で行っているため、Trastuzumabのみならず、複数の薬剤に共通するバイオマーカーになり得るかの検討を同時にすすめたい。 また、胃癌化学療法の二次治療での新たな分子標的治療薬Ramucirumabが保険承認となり、臨床的にその有用性が期待される。Trastuzumab耐性株を用いて、同様の手法でRamucirumabの感受性を検討したい。この研究結果から、胃癌分子標的治療のさらなる個別化を目指すことができる。
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次年度使用額が生じた理由 |
Trastuzumab著効例と耐性例の臨床検体が得られにくく、検体を用いた実験を当初想定数行えなかったため。また、医局内保管の試薬・消耗品を使用することが出来たため。
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次年度使用額の使用計画 |
Trastuzumab耐性に関わる新たなバイオマーカーの検索のため、microarrayを用いた網羅的な解析を進める。その際の試薬・消耗品費に充てたいと考える。
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