研究課題/領域番号 |
25462028
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
吉田 直矢 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 講師 (60467983)
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研究分担者 |
馬場 祥史 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 講師 (20599708)
今村 裕 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (70583045)
渡邊 雅之 公益財団法人がん研究会, その他部局等, 食道担当部長 (80254639)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | PPARγ / 食道扁平上皮癌 / Cetuximab / p21 / Akt / agonist / 低分子化合物 / 予後因子 |
研究実績の概要 |
第三世代PPARγ agonistは、In vitroにて9種類の食道扁平上皮癌細胞株に対し、抗腫瘍効果を示した。 作用機序の評価に関して、PPARγ agonistはp21の転写活性には影響を及ぼさなかったが、Akt Ser473、p21 Thr145の脱リン酸化、p21の核内蛋白発現の有意な増加、Ki67の蛋白の発現の有意な減少を引き起こすことを明らかにした。第三世代PPARγ agonistとcetuximabを併用投与することで、EGFR、MAPKの活性化が阻害され、相乗効果が認められることを示した。 さらにPPARγ agonistの作用機序が、PPARγの転写活性に依存することを示すため、siRNAを用いPPARγの発現を低下させることで、PPARγ agonistの抗腫瘍効果、AKTの脱リン酸化が減弱することを示した。PPARγ agonistが抗腫瘍効果を示す一方で、EGFRの活性化を起こしていることも示した。またEGFRの活性化がパラクラインシグナルによって起こることを示した。 次にEGFRの下流で食道癌の治療ターゲットとなりえるPI3K-AKT pathway, MAPKシグナルに関して評価を行った。食道扁平上皮癌細胞株において、AKT inhibitor であるMK-2006およびMEK inhibitorであるU0126は時間、濃度依存性に抗腫瘍効果を示した。PPARγ agonistはAKT Ser473の脱リン酸化により抗腫瘍効果を示すため、AKT inhibitorとの併用効果は得られなかった。MEK inhibitorとの併用においては、MEK依存性のNegative feedbackの減弱、およびPPARγ agonistのEGFRの活性化によりAktのリン酸化が増強するため、併用効果は十分ではなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動物実験も含めて、実験系が確立しており、実験結果を学会等で発表している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究結果より、第三世代PPARγ agonistのIn vitro、In vivoでの抗腫瘍効果、作用機序を示してきた。さらに、EGFRの下流におけるAkt、ERK経路のリン酸化状態を継時的により詳細なシグナル解析を行うことによって、新規PPARγ agonistの抗腫瘍効果の機序をより詳細に解明した。 臨床試験において、PPARγ agonistの抗腫瘍効果は限られており、他抗癌剤、分子標的薬との併用療法に関する評価に加え、PPARγ agonistの感受性規定因子の検索が重要と考える。臨床試験において、PPARγ agonistの感受性規定因子として、PPARγおよびRXRγの発現が高い症例は抗腫瘍効果が高いと報告されている。食道扁平上皮癌の臨床検体において、RXRγの免疫染色を行うことでRXRγのバイオマーカーとしての発現意義を検索する。 PPARγ agonistの抗腫瘍効果機序に加え、感受性規定因子が明らかになれば、食道扁平上皮癌の新しい治療法につながると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験系が確立しており、予備実験が少ない回数ですんだ。また、医局内の共用試薬を使用することができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究費の大部分は実験にかかる試薬及び消耗品費にしようする予定である。また、研究自体もおおむね順調に進んでおり、得られた成果について学会等で発表したいと考えているため、その際の出張旅費にしようしたいと考える。
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