研究分担者 |
衛藤 剛 大分大学, 医学部, 講師 (00404369)
白石 憲男 大分大学, 医学部, 教授 (20271132)
平塚 孝宏 大分大学, 医学部, 病院特任助教 (20600886)
猪股 雅史 大分大学, 医学部, 教授 (60315330)
岩下 幸雄 大分大学, 医学部, 講師 (60534203)
|
研究実績の概要 |
[研究の目的] ETS-GSによる大腸炎改善効果の機序を解明する。 [研究成果] 過去の研究にて、KCを初めとするケモカインはETS-GSの投与により減少し,大腸炎改善効果の機序解明に重要な役割を担う因子として考えられた。我々は単球や好塩基球における活性酸素や化学伝達物質の放出を更新するケモカインであるMCP-1に着目した。MCP-1は,DSS誘導大腸炎モデルマウスの血清中でETS-GSの投与により有意な低下を認めた為,ETS-GSが血清MCP-1を抑制することが明らかとなった。更に我々はマウス血清中のIL-1bをELISA法にて測定した。DSS誘導大腸炎モデルマウスにおける血清中のIL-1bは正常マウスと比較してETS-GS投与群では有意に低下した。更にDSS誘導大腸炎マウスにおいてもETS-GSの投与により有意な低下を認め,ETS-GSは血清IL-1βを抑制することを明らかとした。 [研究成果の意義,重要性] これまでにケモカイン欠損マウスにおいて,DSSによる大腸炎の軽減が報告されている。またケモカイン拮抗薬は,DSS腸炎誘導を抑制することも明らかとなっている。MCP-1は,MCAF(monocyte chemotactic and activating factor)と呼ばれ,単球/マクロファージ,線維芽細胞あるいは血管内皮細胞により産生され,リンパ球(主に単球)に対して作用する。単球に対する走化性の亢進,ライソゾーム酵素や活性酸素の放出亢進,IL-1及びIL-6の産生誘導など,単球を活性化する他好塩基球による化学伝達物質の遊離促進,T細胞走化性活性を有する。更にIL-1βにも発熱や急性期タンパク質の産生誘導,リンパ球の活性化などの炎症反応を惹起する効果がある。今回の結果は全身のMCP-1によって産生を促進されるIL-1β濃度がETS-GSによって影響を受けるものであり,ETS-GSの炎症性腸疾患抑制効果はケモカイン抑制とそれに関連する炎症性サイトカインの抑制が関与することが示唆され,新たな炎症性疾患治療のターゲットとなり得るものと考えられた。
|