研究課題
GCF2/LRRFIP1(以下、GCF2)は、Actin関連タンパク質Flightless-1と相互作用を有するとされ、細胞骨格調節因子として報告されたタンパク質である。これまでの我々の研究によりGCF2は癌細胞の浸潤・転移に重要な機能を有していることが明らかになりつつある。本研究では、はじめに癌細胞の上皮間葉移行(EMT)におけるGCF2の関与について検討を行った。膵癌培養細胞株および膵癌切除組織標本において、GCF2とEMTマーカーの発現を検討したところ、E-cadherinとGCF2の間には負の相関が認められた。さらに、SiRNAによりGCF2の発現を抑制した癌細胞株では、E-cadherinの発現が上昇することで、強固な細胞間接着を獲得し、上皮系への形質変化を起こしていた。SnailなどのEMTを制御する転写因子は、GCF2の発現を抑制することでその発現が低下していたが、その機序としてWnt canonical pathwayの抑制によるβ-cateninの核内移行の阻害が考えられた。以上より、GCF2はWnt canonical pathwayのmediatorであるDishevelledとの相互作用を通じて、EMTを制御している可能性が示唆された。なかでもGCF2の発現を抑制することは、癌細胞にReversing EMTを惹起し、浸潤の阻止という点で重要な意義を有していると考えられた。これらの成果は、英文誌にて発表した。(Douchi D, et al. Cancer Letters. 2015)さらに、膵癌細胞における抗がん剤、とくにGemcitabine感受性について検討を行った。GCF2の発現を抑制した癌細胞では、Gemcitabineの感受性が上昇することが示されたが、その機序としてJNK/c-Junの活性化が関与していることが示唆された。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件)
Cancer Letters
巻: 365 (1) ページ: 132- 140
10.1016/j.canlet.2015.05.023.