研究課題
静脈内投与された抗癌剤が癌組織内または細胞内に取り込まれて作用する過程を生体内リアルタイムイメージングするためのモデルの確立を目指し、in vitroおよびin vivoでの実験を行った。抗癌剤として分子標的抗体医薬の抗EGFR抗体や抗c-MET抗体を蛍光標識し、シャーレ上に生着している癌細胞との結合が蛍光顕微鏡で可視化できることを確認した(in vitro)。次に、マウス癌転移モデルを用い蛍光標識した抗EGFR抗体や抗c-MET抗体を静脈内投与すると、癌転移巣で蛍光標識抗体が癌細胞と結合するのが二光子励起顕微鏡で観察できた(in vivo)。以上より、分子標的抗体医薬を静脈内投与すると癌転移巣の癌細胞と結合することがマウスモデルにおいて生体内リアルタイムイメージングできることが証明できた。静脈内投与した分子標的抗体医薬は約30分以内に癌転移巣の癌細胞と結合するが、腫瘍血管が漏れやすく血管外漏出した抗体医薬が癌細胞表面抗原と結合するという仮説を立てたが、血管外漏出した蛍光標識抗体は可視化できず。今後の課題である。また、癌転移巣のすべての癌細胞表面に蛍光標識抗体が結合するのではなく、約10%位の癌細胞が染色されるに過ぎなかった。原因として、投与した蛍光標識抗体量が少ない、癌転移巣以外の部位で結合している、蛍光標識抗体投与後の観察のタイミングが早い、などが考えられた。癌転移巣における癌細胞表面の分子標的(EGFRやc-MET)に蛍光標識抗体が結合することを生体内リアルタイムイメージング可能となったが、より効率のよい観察条件の検討は依然不十分のままである。さらに、抗体医薬による治療効果と癌細胞表面に結合した蛍光標識抗体医薬の継時的変化との関連の検討も不十分である。
すべて 2015
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