研究課題
KRAS/BRAF変異型大腸癌は、抗癌剤に抵抗性を示し、転移や再発を起こす予後不良な疾患である。現在まで有効な治療法の確立に至っておらず、新しい治療法の開発が必要である。我々は、これまで炎症環境やマイクロRNAの制御異常による大腸癌の悪性化進展メカニズムについて研究を行ってきた。本研究では、KRAS/BRAF変異型大腸癌の治療抵抗性におけるEGFRシグナルの活性化を検証し、EGFRシグナル抑制性マイクロRNAを利用した新しい治療法の開発を目指す事を目的とした。平成25年度は、KRAS変異型大腸癌細胞株2種類(SW620、DLD1)、BRAF変異型大腸癌細胞株2種類(HT29、WiDr)を用いて、臨床で用いられている血管新生阻害剤に対する治療感受性を評価するために、血清飢餓状態で48時間培養した場合のアポトーシスやオートファジーの誘導能、EGFRや下流のAkt/Erkシグナルの活性化状態についてウェスタンブロット法による検証を行った。血清飢餓状態の培養条件下にKRAS変異型大腸癌細胞株はアポトーシスやオートファジーの誘導を認めたが、BRAF変異型大腸癌細胞株ではアポトーシスやオートファジーの誘導を認めなかった。さらに、KRAS変異型大腸癌細胞株はEGFRの発現が低下し、AktやErkのリン酸化が著明に抑制されたのに対し、BRAF変異型大腸癌細胞株はEGFRの発現が上昇し、AktやErkのリン酸化も維持された。
2: おおむね順調に進展している
初年度は、4種類のKRAS変異型およびBRAF変異型大腸癌細胞株を用いて血清飢餓状態に対する感受性に違いがあることを見出し、特にBRAF変異型大腸癌細胞株は血清飢餓に抵抗性を示すとともにEGFRシグナルの活性化が維持されている可能性を明らかにした。今後、抗癌剤に対して同様の検討を行うとともに、EGFRシグナル抑制性マイクロRNAの併用による治療感受性の増強効果が期待され、計画はおおむね順調に進展していると評価できる。
平成26年度は、KRAS/BRAF変異型大腸癌細胞株における抗癌剤に対する感受性の違いやEGFRシグナルの活性化を明らかにし、EGFRシグナル抑制性マイクロRNAやマイクロRNA誘導性ウイルス製剤の併用による血清飢餓や抗癌剤の感受性増強効果について検証する予定である。
EGFRの下流シグナルの活性化状態をウェスタンブロット法で網羅的に評価するために様々な種類の抗体の購入を想定していたが、予定よりも少ない種類の抗体での検討が可能となったため。血清飢餓状態と同様のウェスタンブロット法による解析を複数の抗癌剤を用いて検討するため、抗癌剤の購入に繰り越した研究費を使用する。
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