研究課題
1) 大腸癌幹細胞に着目した新しい分子標的の探索大腸癌幹細胞マーカー陽性細胞の抽出:大腸癌組織検体をCD44, CD133, LGR5等で染色し、幹細胞の性質を持った大腸癌細胞を同定する。Laser capture microdissection によって細胞単位で採取し、その他の部位とEGFRリガンドの発現の違いや細胞分裂に関わるチェックポイントキナーゼなどの蛋白群の遺伝子発現の変化を検討する。大腸癌組織検体からフローサイトメトリーを用いて、表面抗原CD44,CD133で細胞を分離し同じく、EGFRリガンドの発現の違いや、細胞分裂に関わるチェックポイントキナーゼなどの蛋白群の遺伝子発現の変化を検討する。cDNAマイクロアレイを用いて、CD44, CD133, LGR5の発現の違いにより変化してくるmiRNAを同定する。結果:①CD44、CD133、LgR5抗体を用いた免疫染色において細胞株では発現を確認、また条件設定の再現性を確認した。②大腸癌切除症例のパラフィン包埋切片において免疫染色を行ったところ、LgR5では正常部よりAdenomaが強く発現しているが、癌部では発現が低いということが分かった。③細胞での染色は可能であるが、大腸癌の臨床検体では発現率、陽性率が低いため、標本検体の染色および判定が困難であった。2) EGFRリガンド阻害剤による癌治療法の開発.AKTのシグナルをPTENのiRNAおよび発現ベクターで調整している。
3: やや遅れている
1細胞での染色は可能であるが、大腸癌の臨床検体では発現率、陽性率が低い。2標本検体の染色によるばらつきが多いため、再現性を得られる条件設定をおこなうまで時間を要した。
従来の原発巣・転移巣をみる研究計画では陽性率の少なさから標本選択時にバイアスがかかる可能性がある臨床検体を免染する中で、Adenomaの発現が強いため、同一標本内に正常部、Adenoma、CarcinomaがあるAdenocarcinoma arising in adenomaの標本を評価し、さらにLgR5のニッチと言われているパネート細胞との関係を評価する。大腸癌の発生様式をStem cellとニッチの関係から見ることができる可能性がある。既存の分子標的薬剤の感受性因子の検討;既存の消化器癌に対する分子標的薬はEGFR,VEGFを標的としており、感受性予測の為に、EGFやVEGFのタンパク発現やRNA発現の多寡を利用しようとしたが、多くの臨床試験で感受性の予測は失敗に終わっている。我々の検討では、膜型レセプターの発現の多寡は考慮せず、microRNAの発現の変化が感受性と関係することを検討する。①マウスモデルによる検討② microRNAアレイを用いた検討:ヒト(胃)癌細胞株をマウスに移植した担癌モデルマウスからの癌組織サンプルに対してmiRNAアレイのプロファイルを取得するという実験を複数回繰り返す。取得されるプロファイルデータの再現性から、サンプリング条件の検討を行い、再現性が得られるサンプリング条件を確立する。また、正常組織との比較により癌において活性化が推測されるmicroRNAに対して、実際の組織中の発現量、活性化状態を組織染色、DNAチップ、リアルタイムPCR、ウェスタンブロット等によって確認し、アレイによって得られるデータの信頼性を確立する。
予定されていた動物実験が開始できなかったため。当初予定していた、マウス大腸癌にヒト大腸癌細胞を同所性移植し、肝転移デルを作製する。
すべて 2013
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