先行研究から大腸癌浸潤先進部に強発現しているケモカイン群のとEMTの関連(浸潤・遊走)について検討するために、ケモカイン受容体の発現・機能解析を行った。 先行研究で先進部において強発現しているケモカイン群のうちCXCL9、CXCl10、CXCL11は共通の受容体であるCXCR3をもち、主に二つのアイソフォームCXCR3A、CXCR3Bをもつことが報告されている。 まず臨床検体における各アイソフォームmRNAの発現状況を検討した。大腸癌全体でCXCR3Bが強発現していたが、特に浸潤先進部ではCXCR3B/CXCR3A比が高く、中央部では逆に有意に低く、部位特異的な発現があることが明らかになった。また、タンパクの発現に関しては、CXCR3AとCXCR3Bの共通抗体により、組織中のCXCR3両アイソフォームの発現は確認できた。(アイソフォーム特異的な抗体が乏しく(CXCR3Bのみ少品種存在)各アイソフォーム発現は未解析) またCXCR3低発現細胞株であるHCT116を用い、CXCR3A、CXCR3B発現ベクターを遺伝子導入し機能解析を行った。CXCR3A導入細胞ではCXCL10暴露下で、増殖能・浸潤能・遊走能の亢進を認めたが、CXCR3B導入細胞では増殖・浸潤・遊走に有意な差は無かった。 大腸癌浸潤先進部で、増殖・浸潤・遊走に関与しないCXCR3Bが高発現していた原因は不明であるが、CXCR3Aが大腸癌において増殖・浸潤・遊走に関与する事が明らかになった。
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