潰瘍性大腸炎 (UC) は直腸から連続的に大腸粘膜に慢性の炎症を引き起こす原因不明の疾患であり、その発症には遺伝子異常の関わりが示唆されている。その感受性遺伝子として報告された複数の遺伝子領域がsurfactant protein D (SP-D) をコードする SFTPD 遺伝座の近傍であることが注目されており、その一塩基多型が UC の早期発症に関与することが知られている。今回、 UC における SP-D の役割を明らかにするため、デキストラン硫酸ナトリウム溶液による大腸炎モデルマウスを作成して、大腸炎の重症度を評価した。具体的には、C57BL/6マウスによる大腸炎モデルマウス(SP-D (+) DSS群)を作成し、コントロール群(SP-D (+) control群)と比較して血清SP-D濃度、SP-Dの免疫染色について比較した。さらに、同週齢のC57BL/6 SP-Dノックアウトマウスを使用した大腸炎モデルマウス(SP-D (-) DSS群)において、大腸炎の重症度(臨床的・肉眼的所見、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性、Interleukin(IL)-6濃度)を比較検討した。結果、 血清SP-D濃度はSP-D (+) DSS群でSP-D (-) control群に比較して有意に高値であり、大腸の免疫染色においてもSP-D (+) DSS群においてSP-Dが高発現しており、大腸炎におけるSP-Dの関与が示唆された。さらに、大腸炎の重症度評価においては、臨床的・肉眼的所見ではSP-D (-) DSS群ではSP-D (+) DSS群に比較して有意に軽減しており、さらにMPO活性定量、IL-6濃度定量においても軽減している傾向を認めた。 UCにおいて、SP-Dがその発症・重症化に関与していることが示唆された。今後、その分子的なメカニズムなどを明らかにすることで、治療薬や発症の予防などに有用となる可能性がある。
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