研究課題/領域番号 |
25462068
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
奥澤 淳司 順天堂大学, 医学部, 准教授 (00348913)
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研究分担者 |
小見山 博光 順天堂大学, 医学部, 講師 (30348982)
河合 純 独立行政法人理化学研究所, その他部局等, その他 (30391923)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 大腸がん / 肝転移 / リンパ節転移 / CAGE法 / 次世代シークエンサー / 腫瘍マーカー |
研究概要 |
本研究では,次世代シークエンサー(NGS)を用いて大腸癌リンパ節転移,肝転移に関与する遺伝子を突き止め,既存の診断法,治療法よりも精度の高い医療,臨床応用を確立することを目的とする.本研究の分担者らによって,近年,遺伝子の転写開始点を網羅的に解析するCAGE法(cap analysis of gene expression法)が開発された.そしてこの極めて定量性の高いCAGE法により,ヒトの18万を超える転写開始点と,それに由来する転写産物の発現量の網羅的解析が行われた(FANTOM5プロジェクト). 本研究課題では,CAGE法を用いて,リンパ節転移,肝転移を伴う大腸がん症例を対象に,がん組織のmRNA発現の網羅的解析に取り組んでいる.これまでに,肝転移群特異的マーカー,リンパ節転移特異的マーカーの候補となる多数の遺伝子を特定している.これらの中には,FANTOM5で新たに報告された機能未解明の新規遺伝子も多数含んでいる.今後より詳細な解析を進め,診断マーカーや治療,創薬の可能性を探索していく. 本研究の結果,大腸癌患者の術前内視鏡検査において,早期にリンパ節転移,肝転移を検出するシステムを確立することが可能になれば,これまでにない治療効果が期待できる.そして,術前の化学療法の適応にも大きな影響を及ぼすことが予想され,さらに,既存のstage分類に関しても,生検の遺伝子検査を含め,新たな診断法,分類,指標を作り直すことが可能となり,現在の臨床医療に対してすぐにフィードバックできる貴重な研究である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,次世代シークエンサー(NGS)を用いて大腸癌リンパ節転移,肝転移に関与する遺伝子を突き止め,既存の診断法,治療法よりも精度の高い医療,臨床応用を確立することを目的としている. 今年度は,リンパ節転移を伴う大腸がん組織検体よりRNAを抽出して,CAGE法によるライブラリ調製,NGS解析に取り組んだ.対照群には転移を伴わない症例の検体を用い,得られた転写開始点毎の遺伝子発現データについて,多変量解析,MA-plot等による評価,有意差検定を実施した.その結果,肝転移群特異的マーカー,リンパ節転移特異的マーカーの候補となる多数の遺伝子を特定した.これらの中には,FANTOM5で新たに報告された機能未解明の新規遺伝子も多数含んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
今年度以降は,肝転移症例についても同様に解析を行っていく.また,情報学的解析に重点を置き,次世代シークエンサーにて得られて遺伝子発現データの網羅的解析を中心に研究を進めていく.これには,MA-plotによる候補遺伝子の同定だけでなく,GO解析,パスウェイ解析など,大腸がんのリンパ節転移,肝転移に関与するシグナルカスケードの評価を多角的に取り組む.また,CAGE解析の症例数を増やしていくと共に,臨床情報のフォローアップ,多群比較により,逐次解析精度の向上を図る. 得られた候補遺伝子について,個別に分子生物学的解析や組織学的解析を実施して,その有効性を検証していく.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度購入予定であった次世代シークエンサー用の解析サーバー及び,パソコンは次年度に持ち越すこととなったため.また,試薬の購入も欠品などが有り,一部次年度に購入することとなった. 大腸がん組織検体からのRNA抽出,CAGE法,次世代シークエンサー試薬など,分子生物学的解析に必要な各種試薬を購入する必要がある.候補遺伝子については,さらに個別に検証を進める必要があり,PCR,qPCR,免疫染色などに必要な試薬も計上している.また,次世代シークエンサーにより得られたDNA配列の情報学的解析を遂行するための解析サーバが必要となる.国内外の学会の研究発表および参加費用として,本研究費を使用する予定である.
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