研究実績の概要 |
大腸癌は本邦において最も増加の著しい癌であり、年間10万人が発症し4万人以上が亡くなっている。大腸癌は消化器系の固形腫瘍の中では最も化学療法の進歩した疾患であり、多くの薬剤が開発されている。化学療法の薬剤として近年イリノテカンやタキソールなど天然由来の成分から精製される製剤が多く、新規抗癌剤の成分としての天然成分に注目が集まっている。 本研究では主としてアロマテラピーで用いられる精油に多く含まれるモノテルペンに着目して、大腸癌に対する画期的な治療法を確立することを目的としている。 平成25年度から平成26年度にかけて1,8-シネオールとテルピネン-4-オールという2つのモノテルペンの大腸癌に対する抗腫瘍効果を検討してきた。 平成27年度は赤ワインに含まれるモノテルペンの一種であるリナロールを中心に解析した。リナロールをヒト大腸癌細胞株に添加すると細胞膜脂質過酸化作用によりアポトーシスを誘導することをin vitroの解析で明らかにした。また免疫不全マウスにヒト大腸癌細胞株を移植したin vivoモデルにおいてリナロールを経口投与すると腫瘍の縮小効果を認めた。このことからリナロールは大腸癌に対する抗腫瘍効果を有し、投与経路的にもより実臨床に近い天然成分であることが分かった。
|