研究課題/領域番号 |
25462073
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
野田 雅史 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (30309463)
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研究分担者 |
冨田 尚裕 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (00252643)
山野 智基 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (00599318)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | リンパ節外転移 / 大腸癌 |
研究概要 |
当科で2006年1月から2012年12月までに原発巣切除を行ったStageII:207例、StageIII:223例(炎症性腸疾患・遺伝性大腸腺腫症合併例、術前化学療法施行例、5年以内の重複癌既往症例は除く)についてリンパ節外転移の臨床病理学的意義を検討した。その結果リンパ節外転移陽性例は陰性例に比べて有意に再発例が多いこと、壁深達度が深いこと、静脈侵襲が強いことが分かった。StageII、IIIを合わせた5年無再発生存率はリンパ節外転移陰性例では73%、リンパ節外転移陽性例では32%と有意にリンパ節外転移陽性例で再発が多かった。補助化学療法未施行例・施行例での解析からリンパ節外転移陽性は予後不良因子であり(有意差あり)、補助療法の効果予測因子である可能性が示唆された(有意差はStageIIIaのみ)。またStageII、IIIを合わせた予後因子の多変量解析でも壁深達度、Stageと共に独立した予後因子であった(P=0.0007)。 これらの結果は2013年癌治療学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
リンパ節外転移はその重要性は以前より認識されてきたが、TNM分類では版改定ごとにその定義が変わっているように、その診断が非常に困難である。本研究ではその診断法の確立を目指しているが、サンプルの採取が非常に重要となってくる。原発巣、リンパ節転移陰性部位、リンパ節転移陽性部位、リンパ節外転移陽性部位、遠隔転移部位の全てからサンプル採取が出来ることが望ましい。全てを満たす症例が残念ながら2013年度は少なく、その少数のサンプルでも組織内の癌の割合が低く遺伝子解析に不適格と考えられた。そこで遠隔再発は無いものの、原発巣、リンパ節転移陽性部位、リンパ節外転移陽性部位を有する症例の遺伝子解析を進めているが解析途中であり結果が出ていない。 また症例の病理診断については複数の病理医によるものであり、リンパ節外転移の基準が一定していないため一人の病理医での診断が望ましいと考えた。併しながら依頼出来る病理医が中々見つからず、臨床データに関するまとめも遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子解析については原発巣、リンパ節転移陽性部位、リンパ節外転移陽性部位を有する症例については進行中であり、数か月以内に結果が出る予定である。 また①遠隔転移を有する症例で原発巣と遠隔転移部の遺伝子比較が可能な症例から、リンパ節外転移が指摘されている症例を抽出して遺伝子解析を行うこと、②大腸多発癌で一方の癌では所属リンパ節にリンパ節外転移があるが、もう一方では見られない症例があり両者の違いを調べるために遺伝子解析を行うこと、を予定している。 これらの遺伝子解析を行うことでリンパ節外転移と関係する遺伝子候補を抽出出来ると考えている。 病理診断については漸く依頼出来る病理医が見つかりStageII、StageIIIの全430例について診断を進めてもらっている。現在までに約20%は終了しており、症例が多く時間は掛かるものの今年度中には臨床報告として論文発表出来ると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度から網羅的遺伝子解析を行う予定であったが、サンプルの問題で予定していた解析を行うことが出来なかった。予定使用額のほとんどが、網羅的遺伝子解析に用いる予定であったため次年度使用額が生じた。 サンプルの再検討から網羅的遺伝子解析を行う症例を集めることが出来たので、本年は昨年度行えなかった網羅的遺伝子解析を進める。これらの解析結果の結果がでるには数か月掛かるが、その結果を元にリンパ節外転移に関係する遺伝子の特定を進める(網羅的遺伝子解析を行っていない症例での遺伝子発現の確認と蛋白発現の確認)。 またこの方法によっても遺伝子の特定が困難であった場合は、パラフィン包埋されているサンプルからマイクロダイセクションによるDNA、RNA抽出を試みる。
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