研究実績の概要 |
リンパ節外転移・リンパ節外浸潤は大腸癌において予後因子としてTNM分類、大腸癌取扱い規約で病期分類に用いられるが、その診断法については確立されていない。本研究の目的はリンパ節外転移・リンパ節外浸潤の診断法確立を行う為に転移に関する分子マーカーを見つけることである。 1. 2006年から2012年に当科で治癒切除を行ったT3-4, N0-2の大腸癌においてリンパ節転移検索として提出された標本中の癌組織をリンパ節転移、脈管侵襲型リンパ節外転移(invasive type of extramural tumor deposits; iTD)、結節型リンパ節外転移(nodular type of extramural tumor deposits; nTD)、リンパ節外浸潤(Extracapsular lymph node involvement; ECLNI) に分類し、予後、転移形式との関係を調べた。その結果iTD, nTD, ECLNIは直腸癌において独立した無再発生存の予後因子であった。iTDは更に直腸癌における癌特異的生存、肝転移(直腸癌、結腸癌)、遠隔リンパ節転移(結腸癌)の独立した関連因子であった。ECLNIは結腸癌において独立した無再発生存の予後因子であった。これらの結果はYamano et al. BMC Cancer (2015) 15:859. DOI 10.1186/s12885-015-1885-6で論文発表した。 2. リンパ節外転移陽性症例の内で、遠隔転移がある4症例と転移・再発の見られない4症例を比較検討することで転移に関係する遺伝子を見出せると考えてマイクロアレイ解析を行った。その結果CD82とCD274がこれら2群の間で違いが見られることが分かった。更に当科での他の症例でreal time PCRでCD82, CD274の遺伝子発現を調べたところCD82はリンパ節外転移の無い症例、CD274はリンパ節外転移のある症例で遠隔転移と関係していることが示唆された。
|