肝移植までの待機期間の延長とともに、肝の硬化が進行し、高度の側副血行路(門脈シャント)をみとめるようになる。このような症例では肝移植後にも門脈血流が側副血行路に盗血(steal)される場合があり,門脈再建法とともに門脈シャント処理が重要となる。門脈血逆流は傷害肝の抵抗が上昇することが原因であり、肝硬変症末期の肝臓で認められる血行動態である。このような症例に対し肝移植をおこなうことにより、肝の抵抗因子が減少し、逆流していた門脈血流は求肝性に流れるようになる。しかしながら、肝への門脈血流が側副血行路への盗血により逆流し、肝不全に至ることがある。門脈血行路をCT画像よりCAE(Computer Aided Engineering)ソフトウエアを用いて鋳型構造を再現し、数値流体力学的ソフトを使用して門脈血行動態を可視化して解析する。肝移植前後での肝臓内の門脈血流の均衡崩壊の改善について数値流体力学的に検討し、将来、実際の門脈再建に臨床応用をおこなうための基礎研究をおこなうことが本研究の主題である。 本年度の成果)側副血行路を有していない肝移植症例12例と直径10mm以上の側副血行路を有している肝移植症例8例の術前および術後1年目のCTスライス(150-200枚/1症例)よりCAEソフトとしてMimics、OsiriXを用いてCTより門脈系の静脈を抽出した。ファイルはSTLファイル化され、ワークステーションにてメッシュ化(3D構築された管腔構造に対し細かい線で内側を覆う行程)をおこなった。さらに画像処理ソフトMagicsを使用して血管形状の修正(トリミングおよび平滑化)をおこない上腸間膜静脈-脾静脈-門脈系の3次元構築し可視化をおこなった。
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